第12章 愛し君の喪失
離れていても聞こえる、ジュウ…、と焼けるような溶けるような音。最後に吐き出していたものは主が消えると同時に消えても傷口はそのまま。ポタ、ポタタ…と血液が滴っているのが見える。
片膝を着きうずくまる虎杖の元に行く為に両手の"怒髪天"を解除し、ナイフをしまって片手を虎杖の肩に置く。私が捉えていた3つ程の卵状態の呪霊はもう死にかけ。ヒクヒクとしながら開きかけた場所に一発、殴るか蹴るかすれば一瞬の炎を吹いて祓われていった。
『虎杖を復帰させるのに治療するから、その間お願い』
「「了解!」」
治す間の僅かな時間、伏黒と野薔薇に頼って虎杖の怪我に専念した。虎杖の制服ごと溶かした箇所が再生を始め、ミチミチミチミチいっている。
周囲を警戒すれば伏黒と野薔薇は呪霊の生産元に突っ込んでいった。近付く前に低級の呪いを先に祓う…うん、弾が無ければあいつはこっちに卵を射出してこないもんね…。
「こっちは釘崎と祓う、念の為反転術式で身を守っとけ!」
『了解!』
ふぅ、と息を吐いて集中し、空いた片手で小さなドーム状へと編み込んでいく"怒髪天"を生み出していく。以前は難しかったけれども、負を吸い込む事と負を吐き出す事、それを同時に出来るようにはなれた。それでも形成時は集中力が必要だけれど。
「なんかコレ…めっちゃ痒いんですけど…あの、正座で痺れた時みたいなさー…」
困った顔しつつも時に身を捩ってくすぐったさそうにしている虎杖。溶かされた場所は結構深くて、腕の中心部…骨から再生していた。ちらっと見たときには人体のクレバス…、奥に血と肉と白いもの…痛そうでそこからは目を背けているのだけれど。
『くすぐったいのは我慢しなよ、筋肉とか神経とか再生してんだからさ……ほら、もうじき治りきるよ』
「まー痛いよりはマシだけどさー……おっ、治った!サンキューみたらい!」
サンキュー!と言った虎杖の負傷は皮膚まで再生しきって治療を終え、復帰しようと呪霊防止の為の網目をかき分けながら虎杖は私を振り返る。
「じゃー、あのふたりに合流すべく先行ってるわ!」
『ん、いってら。私もこれ(バリケード)引っ込めたら行く』