第12章 愛し君の喪失
「なんだ?共食い…?
わけが分かんねぇ、けどただの呪霊じゃねぇな、妙な気配を感じる」
縦割れの大きな口は一度ふさがり、遠くのここまで聞こえる、ゴキュリ、という嚥下の音。
その後に反芻する牛のように下から上へと呪霊の何かが移動し、頭部が膨らみ、頭頂部から楕円形の何かを"ヴォエッ!"と呻きながら空に吐き出す。
それは床に落ち、その形状からかゴロゴロと不安定そうに転がる。坂でもないのに意志を持ったようにこちらへと転がる、黒ずんだ卵のようなもの。虎杖の数歩近先でゴロン、と音を立て前後に揺れながらに止まった。
「……、卵って事は生まれるって事だよな、」
ひょい、と虎杖が持ち上げる。そんな中でも奥の呪霊は先程と同じく背後からの呪いを掴んでは飲み込んでいく。
虎杖が片手で持ち上げた、人の頭ほどの卵。伏黒は叩きつける様に虎杖から突き飛ばした。
「うわっ!」
「馬鹿かお前は!どう考えても安全なものじゃねーだろ!?そこは投げるか蹴り飛ばして対応しろ!」
「えー!?」
重いらしい卵が床に落ちると、黄身だとかが飛び出すわけでも殻が派手に割れるわけでもなく。
衝撃で目覚めたみたいに、丸いフォルムから骨ばったような体がスルスルと卵の体から解れて二足歩行へと変化していく。シダ科の植物か?と思ったけれどどちらかというと細めな爬虫類の標本みたいな……。
"ま、マ゙…っぼっ、お手伝イズルルルルるるる"
胸骨に収められたなにかぽてっ、とした一つの臓器を持った呪霊。
そのトランスフォームを見てしまった私達は息を飲んだ。
奥のあいつは呪霊で、呪いを飲み込んでは呪霊を生み出している。
さっき飲んだやつも頭頂部からおえっ、と生み出して、今度は両手に呪いを確保していた。
「ほっそいヤツ、あの見た目の割に呪力結構あんだけど!」
「博物館だから進化とかそういう関係なんかなー」
場所にも依るよね、と虎杖の進化に対して考えて。
『……進化ってよりもどちらかというと変態じゃない?』