第12章 愛し君の喪失
104.
「いざ参らん、ナイトミュージアム!……って時代も国も違ぇ!」
飛び込んだ虎杖がセルフツッコミと物理での突っ込みをしに先に行った。
「元気だな、あいつ…五条先生の影響受けてないか?」
『??低学年化って事?』
「あんた一応、恋人でしょうが…」
展示室が変わってすぐ、虎杖は呪いを祓い始める。
周囲の確認をすればさっきのホールでは非常灯が多かったのに対し、こっちは非常灯が少ない。そして天井も低い構造になっている。伏黒は状況判断で鵺を解除して玉犬を呼び出していた。空中からの攻めには確かに適してない構造だし…。
大ホール展示室が場所を取る展示物やレプリカ、ジオラマが多いとしたらこっちは大きくても人の背丈ほどのもの。なるべく展示物の破壊の無いように!と説明は受けたけれど物陰から急に来られたら無意識に殴りかかってついでに破壊してしまいそう。
そうなると薙刀も長さが邪魔だ。手元に握りしめる、腕や手首から繋がっている薙刀。しゅるしゅると伸ばしていた"怒髪天"を短くさせていき柄からナイフの先端まで長さは1メートル程に調整をした。
「あーあ!ファラオの時代じゃなくて縄文時代かー、呪いの存在もあるしリアルナイトミュージアム期待してたんだけどなー」
ちぇー、と少し悔しそうな虎杖。映画を良く見ると言ってたから期待をしてたんでしょうけど。呪いが関係したリアルナイトミュージアムがここで開催されたとしても友好的な関係は築けないよ。多分再現されるとしたら、四肢を掴んで八つ裂きにする処刑くらいなんじゃないかな。
……というか。
『まずあの世界観は海外に行かなきゃ無理じゃない?ここほとんどが日本国内…邦画で収まる程度でしょ』
「そうだけど…そうだけどさー!」
ドッ!と八つ当たりにも似た一撃を食らって吹っ飛ぶ呪い。幸いにも展示物を逸れて壁にぶつかった。口を尖らせふーっ、と息を吐く虎杖は小さくあぶねぇ…と呟いている。
空に浮く二体のうち、一体を野薔薇が狙い、もう一体を私が突き刺した。小さめな呪いを突き刺すと周囲が明るくなる。すると見えてくるのが一体の呪い。