第12章 愛し君の喪失
太った!と騒いだ後にドウシテ…、と固まる私の体重に急に増える体重計と、後ろからしがみつく男。
"なんなら今から痩せるくらいに激しい運動、しよっか?"
以降、ウエイトの話は悟の前で口に出せなくなった。
……学校終わりの運動やジム通いじゃない、こういった校外活動でこそばんばん動くべき。
ブンッ……ドス、と呪いに突き刺す怒髪天と呪具化したナイフで作られた薙刀。明るい中で無傷の頭部の無い、むきむきした呪いに野薔薇は先程打ち込み、呪いが消えて落ちた釘で"簪"を追撃するように打ち込んでいる。
祓いながらに私達は強い呪いの気配の元へと着実に進んでいた。
天井までの高さのある博物館の上空では、伏黒の鵺が滑空し離れた呪いをバリバリと祓い続けている。
「…先生はそういう所あるからな。我慢する人の前で平気で食べる」
肩に乗る鵺を撫でまた上へと飛ばす伏黒。聞いた所、詳しくは教えてもらってないけれど伏黒は幼少期から悟に世話になっているのだとか。
『昔から伏黒もされてたクチ?』
「似たような事なら。任務で苦戦してる中で手助けする事なくくつろぎながら眺めてたりな」
ちら、と私を見ながらのその瞳はどこか遠くを見ている。
想像するのは簡単で。悟はそういう事やっちゃうわな。サディストというよりはクで始まってズで終わる、2文字の単語なんじゃあないのかな…。
『付き合いが長い分、伏黒は苦労してるね……』
「関わって苦労しないやつ、どこにもいないだろ。ずっと先生と過ごしていて逃げ出さないあんたの方が苦労してんじゃないのか?」
逃げ出すにも逃げられないし、逃げようとは思えないんだよね。なんだかんだ一緒に居て楽しいし、好きだし。
「…っと!虎杖悠仁、巡回から帰還しやしたっ!」
少し離れた場所に行って帰ってきた虎杖はビシッと敬礼する。
「ほんっとあんた元気ねー、散歩に浮かれる犬みたい」
「虎杖が走り回って祓ったからこっちの展示室はもう良いだろ。第二展示室行くぞ」
伏黒が指差すのは大きな扉の方向。
今いる所はもう呪いは居ない。気配を感じるのは奥の方から。
展示エリアを変えて私達4人は更に強い呪力の場所へと進んでいった。