第12章 愛し君の喪失
『はっはっは、あの頭に砂糖が詰まってる人が知的に博物館や美術館に行きたがると思う?高頻度で甘味を巡ってるっての!』
ドッ、と虎杖が呪いに呪力を乗せて殴り掛かる。集まる呪いの中で進んでいけば呪いにもぶち当たるってもんで。
すぐ脇から倒れそうになりながらも駆けてくる呪いに私は薙刀で突く。体術の他に武術を真希に教えてもらった(ほぼ体に直接的に教えてもらった、が正しいけれど)ヒュ、と空を切り確かな手応えと共にひときわ明るい炎が照らす。
それは非常灯のみが照らす空間には目を細めたくなるほどに眩しく。
"グ、ぶぁっ…!"
風のない室内でただ、突き刺した呪いだけを燃やしていく。呪いの何かがパチッ!と爆ぜてゆっくりと鎮火…いや、祓われていった。
クセはあるものの回数を重ねれば慣れるもので。
野薔薇はしつこくやって来る呪い2体に釘を打ち出しながら雑談を続けていく。
カンッ!……ドシュ!と突き刺さって呻く呪いを冷たい視線を送る野薔薇。
「いいなー!って一瞬思ったけれどそれハルカ大丈夫なの?ウエイト的な意味で」
『…うん、太りました!なんで出先でカロリー低そうなの選ばなきゃならないのさ!すっごく美味しそうな写真があるなかで地味なやつ選んでさー、目の前でめちゃくちゃ甘ったるそうなのを美味しそうに食べてるしよー!』
「低カロリーを選んでなんで太るのよ?」
疑問を投げる野薔薇に、ちょっと黙ってから口を開く。
『……持ってくるんだよ、口元に高カロリーの一口をよぉ…』
「あー、納得」
かぼちゃプリンを食べる前でいちごとチョコのムースケーキ(ホイップクリームが添えられている)を食べていた悟。
本当にこれはデートか…?拷問か何かでは?ニンジャスレイヤー的な、目の前でオーガニックネギトロを食う的な尋問か?とジト目で見てれば悟は、一口分フォークに乗せてにこりと笑い、私の口に放り込んでくる。
口開けて受け入れちゃったけどこれ太るだろ!……あっやだ我慢しないで同じの選べば良かった、美味しい……いい…っ。
あ、またくれるの?と警戒した猫がちゅーるに絆されていく感覚。そして翌日に体重にあの甘さが重みとなって現れていく。