第12章 愛し君の喪失
今回は車ではなくて交通機関を使って徒歩でここまでやって来てる。車で来るのは簡単、交通機関や徒歩で来るのは割と楽しいから良いなって思ってる。ちょっとだけサボってる感を味わえるっていうか(そんな事を口にしたら悟に不良って言われそうだけれど)
空を見上げる私のウエストポーチ内で携帯が震えて主張してる。何かメッセージ受け取ったな、と携帯を出し、画面を覗くと医務室に行くまでは水族館で撮った熱帯魚の壁紙だったのが、ウインクしてキメ顔をしている悟の自撮りが壁紙に設定されていた。ふざけてるけれど顔とか各パーツの素材が良いのがちょっとムカつく。
たまにやるんだよな、この人。
ちら、と悟を見るとアイマスクの下の口元はにこにこしていた。いつの間にやったんだ……?アイマスク下げた瞬間を見てないから画像用意してたとか…?
携帯片手に頭上を見上げる。どろどろとした、硬めの墨汁が空からゆっくりと降りてくる様子。視線を下に戻し、画面を確認すれば私の兄弟からの了承の連絡。さっき主張してたのはこのメッセージか。
「やっぱさー博物館の呪いってナイトミュージアムみたいな動くやつなん?」
「はあ?そしたらファラオの石版ん所行けば即解決じゃない」
博物館の呪いあるある(なのか?)を語るクラスメイトから悟に数歩寄った。
私に気が付いた悟は少し身を屈めてくれる。190センチの巨人は秘密の話をするのに協力的で。
声量を下げながらに兄からのメッセージを悟に伝えた。
『今度の土曜日だって。悟、大丈夫?』
「ん、了解。その日に任務入っても速攻終わらすから。お土産にお菓子持ってく?それともお寿司?きっと長居するでしょ?」
『……格差を感じてぶっ倒れるからチェーン店のドーナツくらいで良いでしょ』
「キミんち何食ってんの??」
……普通の物食ってるよ、という視線をちょっと驚いてる様子の悟に向けて博物館に視線を向けた。来客の居ない博物館は人の出入りがなく、じわ…っとした呪力を感じる。