第12章 愛し君の喪失
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「──ふふ、そうか。それは良かった。順調にあのクズ、じゃなかった。五条とやっていけてるようでなにより」
医務室のキャスター付きの椅子をギチッ…と鳴らし、硝子は笑みを浮かべながらコーヒーを少し口に含んでる。
"あのクズ"は失言というよりもわざとだと思うなあ。私も恋人である悟への言葉だとは言え、完全否定は出来ない。
ふー、と小さく息を吐きながら肩を落とす。悟の彼女だしここはちょっとだけフォローしといてあげるか。
『硝子さん、前よりは悟のクズ度は下がりましたって。女の子と縁を切ったっていうので流石に私も見直しましたよ?
……今までの女性の人数を言えないくらいに遊び歩いていただろう、悟の欲望のはけ口が私のみっていうプレッシャー半端ないけれど!』
「高専時代から知ってるからなぁ…。ピルでも処方してもらってきちんと管理しときなよ?腹にデキでもしたらあのクズは調子に乗り始めるからな、学歴や経験を積む為の学生なんかやってられなくなるから。休学が続いてね?」
ははは…と苦笑いで頷けば、硝子にも苦笑いされた。
悟には毎日夜の誘いをされ、時々疲れるからヤダ!と休みを入れていても週にする回数や一夜のラウンド数は割と多い。夜、悟を受け入れる場所が緩くなったりしないだろうか…と何日か前に検索した事もあった。
こうやって医務室に怪我人が来たと呼ばれ、健康体となって医務室を去った後に書類を書き終えたので恒例のブレイクタイムとなっている。
少し前に伊地知が座っていた椅子に私が座り、硝子はコーヒーを、私は粉にお湯を入れるタイプの薄めの抹茶ラテを飲みながらカップ一杯分の時間つぶしをしていく。
「で、約束のデートは残り何回?」
『あと3回っす。こないだのデートで7回目なんで…』
まだ熱めな抹茶ラテを飲みつつ、指を三本立てた。
色んな所にふたりで行ってきた。時々任務のついでなんだかデートのついでの任務な所もあったけれど結局は楽しい思い出を作ってしまってる。写真を撮ったり、部屋を圧迫しない程度の小さなお土産を買ってきたり…。
なんていうか、その…悟とのその10回デートっていう回数の中で、確かにドキドキする事もあるんだけれどフレンドリーなお出かけという事が多い。