第12章 愛し君の喪失
畳まれていた服が手から滑り落ち、崩壊して畳の上に落ちる。リュックもぼす、と音を立てて私から離れ、手ぶらな状態でややしゃがみ手を伸ばした。
そう、しゃがんだ瞬間が私の運の尽き。
悟に羽交い締めにされてからのかつてされた事のある、"ニーブラ!"で捕獲されてしまった。
『や、やだっ!悟とのえっちっていったらめっちゃ疲れるじゃん!温泉来てまでヤッて疲れてどうすんのっ!』
未開封のコンドーム、を見ながら家から何個か買ってくるんじゃなくてたっぷりするつもりなのが見え見えで。
ニーブラから逃れようと暴れる私をしっかりと捕獲したままに悟はこらこらー、と笑いながらに耳元で囁く。
「気分じゃないなら無理にしないっての。
でもさ、しなくたって一緒に寝るくらいは良いだろ?僕はハルカと一緒に寝たいんだけれど…?」
吐息混じりに色っぽく、そういう気分に掻き立て兼ねない。
暴れたのもあって浴衣はかなり着崩れ、上半身の下着の無い浴衣はだいぶ剥けていた。畳にへたり込んだ状態でぎゅっと私を抱きしめた悟はすりすりと頬擦りしてる。何度もえっちをしたいって言われたら流石に許してしまいそう…。
……この人、強引そうで本当に嫌がる事を強要しないんだよな、と彼の髪を撫でる。ふわふわしている髪はずっと撫でてあげたいレベルで。
『しないのなら良いよ、一緒に寝よ?』
「よし、じゃあ飲んできな。グラスもあるからさ!」
ほぼほぼ上半身剥かれた状態で悟は本当に大丈夫なのか…?と心配になりながらも私は悟の部屋で一夜を過ごすことにした。
結果的にする事は無く、寮と同じ様にしっかりと抱きしめられての睡眠。そして翌朝に繰り返される、朝の着替えにブラを着用する奇行。
すっきりと疲れが取り切れたなー、って気分で東京に帰ったのだけれど来る時よりも賑やかになってしまったワゴン車内で、園児の送迎バス・スクールバスの運転手の気分を体験した休日になった。