第12章 愛し君の喪失
「小学生でしょ、伏黒も引率大変よねー」
『あー……小学、22年生?が特に問題児だしねー、引率の先生も大変だよ、ガキンチョ共が騒いじゃってさ』
いいかげんにしろ、という伏黒の声を聞き、伏黒はせっかくの温泉旅行だっていうのに休めて無いよなと同情した。
「ハルカーハルカー、ここ受付で申請すればファミリー向け貸し切りのお風呂が、」
『断る!』
「まだ言って無いのにっ!しっぽり、」
『断る!!』
ふたりだけで来ているなら分かるけれど皆で来ている時にその提案は受け入れられない。人前でそれを受け入れたらしっぽりと仲良く入浴しにいきますと言ってるようなもの。
元はと言えば先週の休みをギチギチに任務と遊びを詰め込んでからの今週末を迎えたこと。疲労、疲労の赤疲労だ。
温泉浸かって癒やされたい、それはひとりで来れないので野薔薇を誘ってのふたり旅の予定が皆が集まって…からの悟の合流。後出しスタイルでの温泉旅館デートと言われてもデート感は無く、かといって貸し切り風呂に行くのは躊躇われる。
……湯船、熱いな。汗かいてきた。
ざばぁ、と湯船から出て縁へ座る。見上げた野薔薇も「私も熱くなってきた」、と息を吐きながら同じく縁へ座った。
大人しい女湯に対して男湯の方は賑やかになり、恐らくは酔っ払ったおじさんを巻き込んでの泥パック大会が催されている。
悟レベルでノリノリじゃねーか。えっ、男性陣って最終形態悟になるワケじゃないよね?多分…影響受けてるだけだよね…?
治らなかったらどうしよう、責任取れないぞ……と仕切りの方を見ていた。
「……で、今晩先生んとこに行くの?」
『……』
「その顔よ…言葉にせずとも表情に出てんだけれど」
言葉に出さずとも顔に出ていたらしく野薔薇は察した。せめて今日くらいは。明日部屋に帰ったら相手するからせめて今日だけは集中的に癒やされたいのよ、何度でも言いたいのだけれど。
「じゃあ今晩は私と同じ部屋なわけか」
『そーゆーこと』
ぎゃははという笑い声と、手を叩いて喜んでいる仕切りの向こう側。領域展開ならぬ幼域展開してしまったようで。
……髪洗ったらさっさと上がるか。涼んでいた私は腰を上げた。
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