第12章 愛し君の喪失
101.
悟が部屋から逃げた後に宴会場へやってきた。大広間、座卓が繋がるように並べられていて、その机には宿泊者の代表名が載せられている。宴会場に入って直ぐの席、既に浴衣に着替え済みでブラウンのサングラスを掛けた悟が口を尖らせて座布団であぐらをかいて座っていた。
「皆遅ーい!先生、先食べちゃうぞ?」
片手にこういう所にありがちな瓶コーラ。その様子を私達4人は立ち止まって察した。私と伏黒は視線が合う、お互いの予想が当たったのだと。
「マジでみたらいと伏黒が言った事になってんじゃん…」
「ん?悠仁、何が?」
当然の如く部屋でのやり取りは知らない悟。
「ほらねっ!まあ、今に始まったことじゃないしお腹も減ったし。
さっさと座りましょう?」
『ん、そうだねーいつもの事だしねぇ…』
みたらい一行様、と五条様が隣り合っていて手前から座っていく3人、私は必然的に悟の隣。
座布団に座って早々に悟は浴衣越し、私の太ももをぽんぽん叩いて何かはしゃいでいらっしゃる。シラフなのによくはしゃげるな…。
とりあえず私は自身の携帯で食事の全体図をカシャ、と撮影を済ませた。
「ハルカ、ハルカ!すっげぇ重要な質問なんだけれどちょっと耳貸してくれない?」
『えー?何をさ?悟が重要な、なんて大した事ないヤツでしょうに…』
携帯をしまいつつ。
重要な事ほど軽く済ませる人だから、と悟については大体知ってる。私の隣の野薔薇に飲み物を注ごうと瓶入り烏龍茶の王冠をカンッ、と抜く。
たんたんたん、とはしゃぐ悟は太ももを叩いてる。ちょっと待ってろや、飲み物注げないでしょうに。
『順番っ!揺らすな、28歳児!』
「……ハルカ、サンキュー!あんたは何飲むの?お酒?」
とりあえず隣が大人しくなったので、指先を烏龍茶に一度向けやっぱりコーラが良いや、と瓶コーラを指した。
……酔って長風呂は明らかに体に良くないし。
新しく栓抜きで開栓した後にグラスに注がれて野薔薇にありがとー、とやりとりしていると再び暴れだす別予約の人。構って貰えない不満があるみたい。
「ハルカ、ハルカっ!」
「…そろそろ構ってあげたら?」
『仕方ねぇな…』