第12章 愛し君の喪失
「野薔薇ーその手に持った鈍器を降ろすんだ、教師に向けて良いものじゃありませんよ?先生ね、これは同意の上なんですよ、ホント!ハルカ、嫌がってない!」
悟が私の側から去った事でさっさと身なりを整え、私を見ている野薔薇に視線を合わせる。その目は"正気か?(同意してるのか?)"という視線。
『まさか!女同士泊まる部屋で同意などするかっての!同意の上、なんて真っ赤な嘘っ!』
ふむ、と小さく頷く野薔薇は視線を悟に向けて再びじりじりと迫っていってる。悟は追い詰められ逃げ場が無くなり、窓に背を当てて止まった。
小さくカチャ、という音がする。
「私直殴りいいっすか?先生?」
「そりゃあ無いぜ!……あばよっ!とっつぁん!」
じりじりと近付く野薔薇から逃げて悟は部屋の窓の鍵を背後で開けてたみたいで。そこから元気に飛び出していった28歳児(教師)。
無限で浮くことも出来るのは知っているけれど…。
畳の上に立ち、野薔薇の構えてる手に手を置き下げさせる。そして残された4人の中で疑問を私は口にした。
『……とっつぁん誰だよ…』
「私か?あのルパン……、まあ良いわ」
ついでに窓を締め、施錠した野薔薇。
それを見てえっ、と声を漏らす虎杖。
「いいの?五条先生戻って来るかもしれないのに…!」
虎杖は悟が締め出されて可哀想って思ってるみたいだ。
でも、あの人の事だから虎杖が思うほどか弱くない。むしろタフネス。そういう所ポイント。
『どうせ私達に先回りして"みんなおそーい、先食べちゃうよっ!"って宴会場に居るんじゃない?』
「そんでこういう所にありがちな瓶コーラとか飲んで俺達を待ってるだろ」
伏黒も悟を良く理解してんなぁ。
虎杖、ちょっと困惑してるけれどそれが私達の担任なんだよ…。
「そっかぁ?」
「行けばどうせ居るわよ。ほら、夕飯!行くわよ!」
『ん!行こうか、確かすき焼きだってねー…』
しっかりと部屋の施錠を済ませて、スリッパをペタペタ鳴らしながら私達4人、そしておそらくは先回りしてる悟。
私たちは宴会場へと向かった。