第12章 愛し君の喪失
『ふあっ……ごめん野薔薇、私は仮眠させていただきますわ』
「まあ無理に起こさないけどご飯の時には流石に叩き起こすわよ?
私は暇だから隣の淋しげな男共を構って来るわねー…
あ、もし先生来たらハルカは部屋にいるって言っとく?」
『浴室にずっと籠もってるとか野に還ったとか言っといて。部屋に来たらロクな事起きない』
今は構ってあげる元気が無い。うとうとしてる中で野薔薇が部屋から出ていく、畳を歩く音を聞いた。
そのままに静かな空間、硫黄とい草の香りで爆睡していたのだけれど。
──気が付けば肩、というか腕の辺りをとんとんとあやすように触れられている。
その優しげな感覚に仮眠で頭や体の疲れが取れた状態、ゆっくりと瞼を上げた。
目の前には任務に行く状態の格好の悟が目の前で横になっていて、片手を私に伸ばしてとんとんと優しくあやしてる。アイマスクの下の口元は微笑んでいた。
「あっ、起きたー?おはよっ!随分とお疲れのようで~…お風呂場に籠もったり?それから野に還ったり?最終的には部屋で眠ってるハルカちゃん!」
『…悟?えっなんでここに居んの……?野薔薇の制止を振り切って来たな…?』
起きたと分かったらにっこにこと無邪気に笑っている。両手を拳にし、自身の顎元に寄せてもじもじとし始めた。何がしたいんだ。
「やだ、ハルカったら精子とか言っちゃってる!そんなに欲しいの?僕の精子?」
『そっちじゃねえよ?前後の発言も含めた言葉の意味を読み取って?』
片手…親指でアイマスクをずらし、片目が晒された。意地悪そうなのに澄んでる色なのがちょっと腹立たしい。
「……僕さ、任務から直帰してきたからまだお風呂行ってないのよ。それでも良い?悟君のとびきり元気な2、3億匹の精子出すのは、さ…?」
『(無視しとこ)あっ、任務お疲れサマンサ』
「……うん。ハルカも運転とこの一週間お疲れ!
で、良いんだね?よーし、疲れた体にはハルカが染み渡るよねー!」
片手が私の浴衣へと伸び、その手を阻止するも掴まれている。こいつ本気じゃねーか!
油断した!しかもここ私と野薔薇の部屋……ま、まずい!最中を見られたら…!悟はぐいぐいと浴衣の生地を引っ張っていく。それにつれてはだけていく胸元。逃げようにも横たわる畳の上じゃ抵抗も虚しい。