第11章 その男、心配性につき…。
「……マジで全員切ったよ?女の子なんてもう、この子だけ居りゃ充分でしょー?」
「へえ~…どう断ったんです?というか先生めちゃくちゃ遊んでるってイメージが…」
良い質問だ、それを私は聞きたいんだ。暴れるのをぴたりと止めて聞き耳を立てた。
「ん?そうだねー…始めからキミは遊びだったんだ!本命出来たからここでバイバイだねー!とか、飽きた!他の子に集中するね!とかそんな感じだったかなー?」
『「「最低だ」」』
そりゃあ硝子にクズと言われるだけはある。顔は見えずともその立った白髪の後頭部を見た。
「人数とか言ったらハルカに逃げられちゃうから言わないけど…いや、もうねどこに逃げようとしても逃さないけれどねー」
隠すほどってどういう事だ、どれだけ各地方に居たの?都道府県1箇所につき約ひとり?それなんてイングヴェイ?
しかも人数を聞いて私が逃げる可能性があり、そして例え逃げようとも結局は逃げられないという結果。黙って聞いていた姿勢を止めてやはり抱えられた状況から逃れようとジタバタと暴れる。
『ど、どんだけ遊んでたわけ!?変な病気とか無い?大丈夫?全員に手を出してるからこの人絶対ヤバイでしょ!』
「えー?流石にマナーは高専時代からキッチリしてたよー?当主になるに重要でしょ?それにいざもしもの事になった時に裁判や養育費とか嫌じゃーん」
『うわっ「「最低だ」」』
二度目の声を揃える事態になった後に190センチの巨人はずんずんと歩み始めた。悟の背後しか視界に入らなかった私にベッドに変わらず座ってる伏黒と椅子に座ってる乙骨がこちらを見上げている。
きっと私はドナドナの売られていく子牛のような悲しい顔をしていただろう、ふたりの私を見る顔が憐れんでいた。
「さ!ふたりとも戻った戻った!真希やパンダに投げられても怪我しないようにしてよー?僕は僕で体術頑張るから!」
『頑張るなっ!』
術でしがみつくものが何もない。立ち上がって去っていくふたりの背を見ながら私は悟に個室へと連れて行かれた。
……死ぬ事は無かったけれど。開放されたのは1時間半くらい。しばらく通路に、壁に寄りかかりながらぺたんと座る私の側を、悟は口笛を吹きながら個室のシーツを洗濯しに、色々とすっきりしたのか足取り軽く通り過ぎていったのが少しばかり腹が立った瞬間だった。