第11章 その男、心配性につき…。
思い出されるはアガリビトの件の翌日の舐めプ並走。必死に走っても左右にひょこひょこと現れて並走し、これまた良い笑顔でねえ?今どんな気持ち?ねえねえどんな気持ち?と言わんばかりに必死に走る私を観察していた。
十代、いやもっと前から呪術に慣れ親しみ体術等を経験した年上に対し、私は平凡に過ごして数ヶ月前から体術や基礎体力を得るための運動を始めた年下。男女という性別もあるし。お風呂に入る時やえっちの際に見る悟の体つきは筋肉が良く着いていてまずその時点で私と体の構造が違った。
だからこそここは未知なる助っ人だと乙骨に救済を試みるも、彼は苦笑いだった表情がふんわりとした笑顔へと変わった。
おっ!これは期待出来るか?と思ったもつかの間。
「あはは…、予想外に仲が良いようで僕がハルカさんを心配するまでもなく、五条先生とやっていけそうですね…」
『これ!どこが!捕食前でしょ!寸前ーっ!ヘルプ!』
ぐぬぬ…っ!現役力士とちびっ子相撲ばりにレベルが違う!制服よりも動きやすいジャージだけどもそんなの関係ねぇ!
乙骨は私を助けなくて良いと判断して生暖かい目で眺めているし、伏黒は携帯画面からやっと顔を上げたかと思えば。
「助けろとか以前に自分で招いた事だろ……」
『そりゃそうだけれどさっ!』
どちらかと言うと伏黒はこっちの味方してくれると思ったのに…っ!余裕そうに悟がぐいぐい迫る中で必死に近付かないように押し返し続けている。
「憂太…は良いとして恵は怪我も治ってるよね。怪我人無し!うんうん、良い事ですね~じゃあ次はハルカに僕の心の怪我を治して貰おーっと!個室で」
手で押していた悟の頬の押し返す力が無くなる。それが避けられての事だと気が付いた時にはその方向へと私はつんのめり、悟は瞬間的に屈んでいて、体をがっしり捕まえられてしまった。
あっ…終わった。かつて体験した浮遊感、足が地面から浮き上がる。
これは京都校の東堂にやられたな。今の私は肩に担がれている。高さも当時を思い出される程に高く、私の視界に入るのは悟の背面と医務室の床。