第11章 その男、心配性につき…。
医務室という密室とは言え危険な話題。夏油の名前を出したら昨日の事もあるし、近くで聞かれていたら…。
慌てて私は乙骨に片手を出し制止する。首を横にぶんぶんと振って。
『その両者の名前を言っちゃいけませんって。昨日色々と…』
昨夜の嫉妬した悟との夜を思い出した。
私は悟が一番だと思ってるけれど、先輩は悟よりも夏油を推してる。いや、教師フェチって事じゃないんだけれど。もしこの会話が悟に聞かれたら今夜というかそこら辺の物陰とか個室とかで色々と大変な事になってしまう、主に私が。
敬称つけたらキスね、の時もどっかで耳でも澄ましてんのか、"悟"という単語に反応するような身体の作りなのか。多分夏油の名前でも反応するような気もする。
よくわからないけれど、どっちの名前でも聞かれたら悟を召喚してしまう。
「色々と??」
私の色々と、に反応する先輩と何かを察してる伏黒の顔。
これは私と悟の問題、細けぇ事は言わない…っ!
『それは置いといて。
心配ご無用ですって、乙骨先輩。これでも何回も悟に危険な時に助けられたりと充分大事にされてるんで…』
……まだ不安そうな顔してんな。以前の悟は乙骨にどういう所を披露したんだと聞きたい。
不安ならば安心出来る事を伝えれば良いのか、と私は腕を組んで天井の照明を見上げる。うーん…。
昼間でも外の日の光よりも明るい蛍光灯に小虫が何匹かたかってるのが見える。
安心出来るもの、安心出来るもの、安心でき……ああ、そうだ。
にこ、と笑いつつ先輩を不安そうな顔を見た。
『そうそう!悟、女性関係全部切ったみたいだし』
「「嘘だっ!」」
『えっ…ええ~……』
力強く否定されてる悟。伏黒も一緒になって声を張り上げてたぞ。信頼されて無いのか、悟。きっとどこかでくしゃみをしてる彼にドンマイ!と念を送りフォローはしておく。
『任務とかであちこち行くじゃないですか?その先々で関係を切って、携帯に死ねってメッセージが来てるみたいで…。どういう振り方したのかは知らないけれど……、』
振ってから死ねなんて言われるのは相当だ。どういう失礼な振り方したのか今になって気になってきた。
困惑した男ふたりの顔。興味を持った視線。それを見て聞いてみたくなってくる。