第2章 視界から呪いへの鎹
『色々あって……と、とにかくっ!もう、こういう事しないで。ばあちゃんに言われたら数十分隠れてばあちゃんに終わりましたーって報告すれば良いんじゃない?
…ってことで、報告でもしてきたら良いんじゃないの……なんかもう、疲れたし…』
夕方のダッシュもそうだし、浴室での抵抗がまたも良い運動になってしまった。心身共に疲れた。
龍太郎は立ち上がり、ぐしょぐしょのスーツでお辞儀して浴室から去っていった。
……きっと廊下とか掃除するハメになるんだろうな。
はぁ。また一難去った……
安心して脚を組み天井を私は見上げる。換気は良く、結露は落ちてこない。室内の暖色の明かり、落ち着けるプライベート時間が台無しになったなー…。
「どうせだから一緒にお風呂入る?もう一緒にお風呂、入ったも同然じゃない?」
隣に座る悟が指差して見るのはバスタオル上部の肌色と下部の太もも。
『………何見てんの?見物料でも取ろうか?』
前言撤回。一難、去ってない。
自分の体を抱きしめて、少し悟から離れた。
さっきの問題があったからその対応でここに居たってだけで、今はふたりきりで問題が発生している。
「すっごい嫌って顔してるー…そんなに僕と一緒に入るの、嫌?」
『あったりまえでしょ!』
「服、がっしりと掴んでたのに~?」
『それはそれ、これはこれ!』
ちぇっ、と言いながら両手をズボンのポケットに入れて、渋々浴室を出ていく背中に私は伝えるべき言葉を伝えなきゃ、と悟さん!と呼びかけた。
振り返る悟は少しだけ笑みを浮かべている。
『助けに来てくれてありがと、悟さん』
「……ん、のぼせないように早く上がるんだよ。じゃないと後から合流しちゃうぞー?」
背をむけて、片手をひらひらとさせて。悟は脱衣所を出ていった。