第2章 視界から呪いへの鎹
「ほーら、言ったろ?一緒に入れば良いじゃんって」
『いったァ…!』
バスタオルの巻いていない素肌の出た背の部分をぱちんっ!と後ろから面白がって叩かれた。悲鳴を上げる程痛いわけじゃないけれど、浴室内に良い音と、背にじんじんと痺れを感じる。
いったいなぁ…。
『いくらなんでも悟さんとき、キスの後に一緒にお風呂とか難易度が高いわっ!』
ははっ、とからかうように笑うその隣でバツの悪そうな龍太郎が続ける。
「妹の多い私は、従者かつハルカ様の許婚という立場でこちらに来ましたが、まさかこうも当主に強引に孕ませに行けと命令されるとは思いませんでした」
「その割に意外とノリノリだったろ、ハルカがタイプだったの?」
「いいえ、五条様、私にとってはハルカ様はタイプじゃないですから、さっさと済ませようと。最悪いざという時は脳内で好きなアイドルに補填して気合入れようとしてました」
『あ゛?』
「あっ…その、ひ、人によってほら、タイプがありますのでっ!」
慌てて追加してるけれどフォローになっていない。タイプじゃなくともヤろうとしてたろうに。何を言い出すんだこの男は。そしてそれを聞いて悟は膝を叩いてわははは、と笑っている。このふたりは失礼極まりない。
着替える事無く、バスタオルを巻いて詳しい話を聞いている。着替えたいけれど話は直接聞きたいのでこのまま聞いているわけで。
「ハルカ様は23歳、白髪化もかなり進んでおりますので早めにしないとハルカ様自体が限界になりますし…」
『……白髪化はしてるけれど、こことここは染めてるんだよね』
「……はい??正気ですか?」
メッシュを入れた髪の束を摘んで説明すると理解不能だと龍太郎は喚いた。
なお、悟はまたもウケていた。笑い事じゃないっつーに!
これがメッシュではなく全部染めていたら道具ですらない扱いを受けていたのかもしれないな…。
「わざわざ白に染めるなどややこしすぎます、なんでそんな事をしたんですか?おかげで私は当主に、次期当主になるであろう、ハルカ様に強制性こ、」
『言わなくていいって言ってんでしょーが!』
……そんな事を言われても、いちいち母についてを説明する義理は無い。
もう、この人にはテキトーにごまかしておこう。