第11章 その男、心配性につき…。
まだ私は限界は知らない。どこまでが治せるのかも。それから充電池のように使用回数(限度)があるのかさえ。あんなにあった書物もひとりひとりが自分はこうだった、こういう事をしていた、現時点の血はここまで繋がってるという似たような手記だばかりだったし。
だからそれらについては書物のどこにも無かった。皆早死してるからかもしれないけれど……長く生きたい私にとっては未知の能力。
領域内でそういった事、分かってる人は誰か居ないものかな?新田がジャケットを診察用ベッドに手を伸ばして引き寄せてるのを眺める。
……今日はもう医務室召喚は止めて欲しいなぁ。皆、健康であれ。それか怪我しても今直ぐ来て欲しい、来る手間省けるしさ。
ジャケットを羽織り直した新田は椅子から立ち上がって、「お邪魔しましたッス!」と元気に帰っていった。
『……さーて、新田さんの治療済みの証明書書かないとなー』
机に向かってペンを走らせ始めてすぐだった。私のさっきの考えが反映したのか、医務室のドアが控えめにノックされる。
電気着いてるから居るのが分かるんだろうな、私の携帯は鳴ってない。バイブが鳴ったわけじゃないよね?と念の為携帯を確認しながら(大丈夫だった)私はデスクからドアへと、キャスター付きの椅子を回転させて振り向いた。
『どぞー』
ガラッ、と音を立て入ってきたのはジャージ姿の。
『あれま、伏黒……と乙骨先輩では』
昨日夏油と一緒に一時的に帰ってきたというけれどとても謎の多い先輩。
昨日は夏油に会ったけれど、今日は午後の体術で顔合わせをした。苗字が乙骨、名を憂太。どういう人物かといざ会ってみたら大人しくややおどおどした性格で。
自己紹介もそこそこに乙骨と真希の体術を見ていた所で私が新田に医務室に呼ばれてしまった、というのが現在の状況。
医務室にやってきたふたり。見た感じ、伏黒が額から血を流している。歩行はしっかりとしているけれどそんな伏黒を乙骨はドアを開けてやったり、最後に入ってきてはドアをそっと閉める……怪我してる訳じゃない、乙骨は付き添いに来ていた。
…なるほど、優しい先輩なんだな!と少し前のカージャックをした先輩達との違いを知った。
少し目が泳ぐ伏黒、怪我をした場所を指差してる。