第11章 その男、心配性につき…。
何故攫われる事と結婚を急ぐ事が関係するのかが分からない。
恋人ではなく身内になってしまえば捜索がしやすくなる、とかかなぁ…?あっ、さっき保険って言ってたから保険関連…?
そうだ、身代わりの一族と言われた春日であるから、私は早めに入っていた方が良いって事なんじゃあ…。
『せっ…生命保険関係か』
「違うよ?他の誰かに強制的に結婚迫られないようにの保険なんだけれど。それに最悪の場合のこの保険の発動で、今の恋人以上に離れていてもキミを守ってあげられるんだよね」
その説明でピンときて、確かに攫われた先でそういう事になったら嫌だしなあ、と考えながらさらさらと書いてしまった。
……うん?
書いてしまった…?と判子まで捺し、その書面をじっと見ている所でひったくられる婚姻届。
悟は用紙を広げて天に掲げる。
「ふふん!これが非術者も術者もやってしまう、愛という歪んだ呪い、人生の"縛り"、墓場とも言える結婚だねー!」
『その言い方だとロマンもクソもねえな』
部屋で届けを天に向け、くるくると楽しげに回っている、28歳児。とても楽しそうにひとりで喋っている。
……多分、脳内の出来事が口に出てしまってるんだと思うんだけれど。
「あー…デート10回目とは言わずすぐにでも提出したい!
……超ヤバ、キミが奥さんになるとか本当泣きそう…。森の小さな教会で結婚式挙げちゃったりハネムーンにグアムとか行ったり、毎日えっちしまくってある日突然"さとるっ私生理が来ないのっ!(裏声)""俺もだよハルカ…っ"ってやって妊娠発覚してさ~、パパとママになってさ!
夫婦からもう家族って関係になっちゃって分娩室でキミの手を握って何時間も掛かって、おんぎゃー!って生まれた可愛いベイビーを抱えてそこからすくすくと育つ我が子と更にお腹に新たな生命………くぅ~テンション上がるーっ!
親父さん達にも挨拶行ったりしないといけないよね。やることたくさんあるけれど、今晩夕飯に赤飯炊いちゃおうかなー!祝い事にはお赤飯!」
凄まじい未来予想図だな…と悟の想像力に脱帽したわ。
てか、生理が来ないのの返事になんで俺もだよって答えてんだよ、と待てが出来そうに見えない男にじとーっとした視線を送る。