第11章 その男、心配性につき…。
「スーパーには売ってないだろ、俺たちが欲しいのは春日の女、お前だ。余計な怪我したくないなら大人しく……って春日の一族なら怪我しても治すか…多少痛めつけてでも良いだろ」
「はい、五条悟と合流したら厄介です、さっさと連れ帰りましょう」
「だな」
男ふたりがアイコンタクトをした隙を見て、一気に伸ばすのは反転術式。
まずそれぞれの両手を、次に足を素早く巻きつけて自由を奪う。
「あっ!」
「手間かけさせやがって!」
手から麻袋を落とし、手足共にぐるぐる巻きに胴体を縛っていく。
そのまま地べたをテコにし、遠くへと放り投げた。
軽くない、重たい人間を投げ飛ばすのに良い放物線を描けそうもない。それでも私が逃げるための距離…時間は取れるはず。
『ホイホイ着いていくと思ったか、ばーか!』
遠くと言ってもおそらく呪術師だと言っても流石に殺すのは気が引けて、10メートルくらい先の駐車場のアスファルトに投げたけれど。
ドチャッ!という音と私が運転席に乗り込んだ音が同時だった。急いでエンジンを掛け、シートベルトなんて今は律儀にしてられなくて。急いでギアチェンジ、パーキングからドライブへ。
アクセルを踏みつつ私はすぐに出られる左折から公道へと走り出した。走りながらに車の中でロックをしつつ、気になるからミラーをこまめに確認しながらの走行。
『うわー、ダッシュで追ってきてるよ~…最悪か、この状況!』
ルームミラーから見えるは、走って車を追う細身の男。遠くなっていく背中はちょっと追いかけたけれど車に変えたほうが良いと判断したんだろうな……。
今更車に乗って追おうとも、走り出してる私の運転してる車の方が早いんですけれど。離れた位置の信号で止まるも追いつかれる事はなく、はらはらしながら私は高専へと無事に帰ることが出来た。