第11章 その男、心配性につき…。
レジを通り、袋に商品を詰め込んでいく。何かの仕入れか大家族の代表みたいな買い物量。パンケーキミックスが大半を占めてる気がするんですけれど(しかも悟が気に入ってるのが箱のタイプだから余計にかさばる)
買い物中携帯は気にしつつもなんやかんやで両手に買い物袋をたくさん持つハメになってしまった。これで袋が破けたら大惨事、丁寧に運ばねば。
『重てぇ……誰か暇な人でも誘えば良かったかなぁ』
っていっても、部屋のふたりはなぁ。どっちかだけでも良いけれど連れてくれば良かったかも、とちょっとだけ後悔してる。
破けないようにと変に持っているから、呪力を体に回して体力の補佐をする。せめて車までは。高専に着いたら寮までまたやれば良い。ついでに反転術式でより楽しようとビニールの取っ手に式髪を巻きつけて手が痛くならないようにしている。非常に便利かつ痛くならないのは嬉しい。そういうサポートの為の呪術じゃないはずなんだけれどなー…なんて。
店舗から歩いて横断歩道を渡り駐車場へと進んでいく。道路の反対側、少し奥の方に停めているから少し距離があった。買うものを考えたらもっと近くにすれば良かったよ。一歩踏みしめる毎に買い物袋がガサガサうるさく、部屋に帰ったら悟に"次は絶対に悟がパンケーキミックス買ってこいよ"と文句を言いたい。
両手が塞がる中、反転術式で鍵をバックから取り出して手まで運ぶくらい余裕だ。
鍵を開けて荷物を車の後部座席に全部乗せ終わった。重たい荷物からの開放感と運搬を終えた達成感。あとは帰るだけ。
『っふー……』
腰に手を当てて伸びをする。買い物だけでも一苦労だよ。でも、今頃任務中の皆も大変だろうに…悟だけさっさと帰ってきちゃったのかな…。
駐車場のアスファルトを踏みしめるタイヤの音。
おっと、隣に車が入ってきてしまった、と私は少し避けた。
さーて、私の息抜きも終わった事だし帰ろうかな、高専に。電話で呼ばれたら大変だ、後10分くらい待って!って言ったらどこにいるねんっ!って突っ込まれる。
運転席のドアに手を掛けようとした時だった。
「春日の女だな?」