第11章 その男、心配性につき…。
95.
『──はい、終わり。お大事にー』
「え…も、もう終わりッスか…?」
補助監督生である新田。伊地知につれてこられて医務室に来ていた。
右手に裂傷があったけれど触れて数秒で完治。後は報告書を書いて私は部屋に戻るだけよ。そう思ってデスクの椅子を引いて座る。報告書も引き出しから取り出した所だった。
「家入さんや弟とは違うッスね…いや、もっと…なんか、こうっ!術式開示的なのとか式髪がぶわっ!とか…春日独特の…っ」
振り返れば椅子からガタッ、と立ち上がって身振り手振りで術の印的な動きを表現してる新田。その背を伊地知がぐるん、とドア方面へと誘導してる。
「ですからこういうやり方なんです。治療が終わりましたから戻りますよ、新田さん」
「はい!……治療、ありがとッス!」
『お大事にー』
伊地知も頭を軽く下げ、新田と共に医務室から出ていった。
書き慣れた書類。もう報告書を書き上げちゃった。これですぐに部屋に帰るのも部屋であのふたりまだバチバチしてたらどうしよう。
椅子に座ったまま両手を横に広げて目の前でぐぐっ…と伸ばす。部屋にこもるのも楽しかったけれどこのまま息抜きに出掛けよう、私服だし。車を借りて近場で買い物してすぐ帰ろう。人が多い所ならば変な人も来ないでしょうし。
そうと決まれば行動は早めにしておかなきゃ、と車を借りて高専の外へと出掛けた。
一番近いスーパーはそこまで品数が良い訳じゃないけれど今欲しいものは全て揃えることが出来た。
まさかまさかの一箇所で済んでしまうとは。二軒目も覚悟してたんだけれど。カートを押し、上下の籠に品物を詰め込んでいってセール品に目移りしてしまう。
やっば!カレールウひとり3個までだけれど安いじゃん。
朝に悟特製のストロベリーラッシー飲んだ際に脳裏によぎったのはインドカレー。本場に行けずとも、外食出来ずとも家庭内のカレーでも良いや、今日の私はカレーが食べたいんだ。という事で今晩のメニューが決まってしまった。
コレに合わせて福神漬けやフライドオニオンが欲しい所。