第11章 その男、心配性につき…。
実はと言うと序盤はやや遊びで次第に本気になっていた僕。本気だからこそあの子の希望に合わせてあげたいのだけれど、そこは当人達だけの話。
傑は僕とハルカとの普通の恋愛について、その点を厳しく言う。すっごく真面目な顔して。
「互いに籍を入れられる状態ならさっさと入れなよ。未婚の春日なんてどれだけ価値があると思ってんだい?馬鹿や猿共の目には未婚の春日であるハルカは悟の恋人…だなんて映らないよ。ただ金を生む鶏くらいしか思われてない」
「……知ってるさ。だからこそ狙われやすいってのも…」
「随分と控えめだな。いつもならがっつくクセに本命でチキってるのかい、悟。本当に好きならばこそ早く行動しなよ」
僕は床を見つめた。隣じゃ呆れたような声の傑。
知ってんだよ、そんな事。早く一緒になりたいのは僕の我儘だけじゃなくてハルカの身を守るためでもある。見えない奴らがいつハルカに手を出すか分からない。確実に一定数春日の末裔が居るって知ったら手を伸ばす勢は居る。
他人の怪我をさくっと回復して、戦えて囮にもなるからって単純な理由で欲しがるのとか、縛りを付けて怪我を恐れずしこたま回復させるやつとか。僕的に一番嫌なのがハルカの婆さんみたいな考えの奴。どっかに隠してひたすらに女の子を産ませ続けるブリーダー。春日の一族は女系、女が生まれれば確実に術式が継承されるから。
一生を隠し切るのは大変だし子供の件があるからこそ、籍は大事。だからこそ"未婚の春日"は相当価値があるって事を知ってた。
隣の傑を見るとやれやれって顔をしてる。
そんな傑の顔を見て僕は笑った。
「好きだからこそちゃんとしたいんだよねー。次の3回目のデートの場所も、4回目に行くデートの場所も僕らには結婚までのスケジュールが埋まってんのよ。さっさと五条に閉じ込めるのは簡単な事だけれど五条悟とみたらいハルカの時間は今だけなんだ。その何にも縛られずに自由で楽しそうなあの子は今だけよ?」
「…悟、」
何か言いたそうな傑だけれど、それを僕は遮った。