第11章 その男、心配性につき…。
「今着ていないだろう傑の袈裟に前回の3倍のカマキリの卵を忍ばせてやるよ」
『だからその件をきちんと謝れっつってんの!』
身長差のある分、下から悟の顎に頭突きをする。ゴッ!と良い音がして引き寄せられる力が弱まった。
「ん゙っ、いってぇ……ッ!」
その隙を見て私は屈み、悟の拘束から抜け出して頭突きされた場所を押さえる悟を見た。ちょっぴり涙目で訳がわからないという顔をしてる。
「ハルカはどっちの味方なのっ!?今の結構痛かったんだけど!龍と虎の子要素漏れてるよ!」
『うるさいっ!』
ぱっと見て怪我してるようには見えないけれど痛そうなのは演技では無さそう。顎をさする肘に触れてしかたねぇなとその痛みを貰い受けた。
さて、話が逸れてしまったから路線を元に……という所で私の携帯が鳴ってる。恐らくはお呼ばれだろうな、とベッドの側に行けば座ってる夏油が、はい、と言って取ってくれて私に手渡した。
それに軽く頭を下げて、通話ボタンをタップしながらワンピースと上着を手に電話に出た。
『──はい、みたらいです』
はい、医務室前で怪我人が待ってますってさ。
今日は別に制服じゃなくて良いし悟だけならまだしも夏油の居る空間で着替えは出来ないし。
今着てる服にプラスして部屋着を隠すように着替え、速歩きで室内を移動し、私の部屋で呆然としながら目で私の動きを追っている男ふたり…という奇妙な光景に立ち止まった。
『悟、私が戻ってくる前に夏油さんとの進展が無ければ……分かってんでしょうね?昨日の件、全部実行に移すから』
謝罪してなかった場合、しばらく釘崎の部屋に居候させて貰おうかな、くらいにまで考えてる。
悟は困った顔をしつつ、両手を突き出し私を宥める様に、そして玄関を指差した。
「分かった分かった、ほら怪我人居るんでしょ?早く行ってきなよ」
大丈夫かなあ…。私は返事はちゃんとしてる悟に頷いて、夏油にもちょっと心配しつつ鞄を持ち、携帯をしまいながら医務室へと走っていった。