第11章 その男、心配性につき…。
『あ゙ん?誰がすけべじゃい!そうやってすーぐ話を逸らさないの!そもそもすぐ手を出す悟と一緒じゃないでしょ、夏油さんはよォー?誠実さってモンの有無ってのがさー?』
話を逸らす悟の軌道修正をしてると背後からくすり、と笑い声が聞こえる。
「悟がこのまま現れなかったら君をベッドに押し倒してたかもね?」
振り向きゃにこにこしているけれど目が笑っていない夏油。……本気じゃないでしょ多分。やり返そうにも時期的にカマキリの卵は見つからないだろうから、そういって挑発して仕返ししてる。
ほら、悟が謎の意地を張るから夏油も仕返しとして悟を煽るようにしてるんだよ。
夏油の発言を聞いた悟は真顔になり、片手を顔まで上げる。指先でアイマスクを引っ掛けると首まで下げて素顔を晒した。少しばかり怒った表情だった。
「……傑、ハルカは俺のだから。こればかりは誰にも譲れねえの。それ、ふざけてじゃなくて本音ならいくらオマエでも許さねえよ?」
ぐいっ、と悟の片腕に引き寄せられて密着する。結構力が強い。
「へえ…?どう許さないのかな?言ってごらんよ悟」
のんびりくつろいでいた空間がギスギスとした空間に早変わり。本当にこの人達親友なんです?ピリついた空気、マジでキレてる悟の顔を見上げてこれは昔悟のやらかした悪戯の件を謝らせるどころじゃなくなってきた。部屋内で呪術を使用されたらたまったもんじゃない、術、使わないよね?この人達……。
どう許さないか。このやりとりの中でドラマとかみたいにテメーを泣くまでぶっ飛ばす!とか、お前の大事なものを同じ目に遭わせてやる!とかそういう話かと生唾を飲んで冷や汗をかきつつ悟に引き寄せられたままに静観していれば。
──やはり、この男は五条悟という人物だった。