第11章 その男、心配性につき…。
がた、ばたばた…。
玄関の外が何やら騒がしい。何となく予想は着くけれど。
メッセージを送った際に既読は着いてた、けれども返事は無かった。よほど急いでいたのか、それとも任務等で返事が出来なかったのか…。
ガチャガチャと鍵を差し込む荒い動作と、玄関から駆け上がって来る物音。
座ったままに視界にまだ現れない状態の彼を思い浮かべる。それは夏油も同じだった様で。
夏油を見れば同じく私を見ていて視線が合い、互いに苦笑いをした。
「随分と悟も変わったものだねぇ」
『かなり焦りすぎでは?』
ドタドタと慌てて帰ってきたであろう悟は部屋に入って来るなり足を止め硬直した。そしてゆっくりと震えながら人差し指を指している。
「えっ……事後…?ハルカ…?うわき…?傑に僕、寝取られた感じ?だってこれ、AVの導入とかのシーンだろ……?もうハルカ傑にぶち込まれた後……?」
ほら、こういう展開になると思ってたし。
はあ、とため息をつき悟をじっと見る。やけに慌てているアイマスクの悟。
『早とちり乙、エロボンズ。部屋でくつろいでたら悟の部屋側から夏油さん来たんだよ。てかなんで手ぶらなの、パンケーキミックス買ってきてなくない?明日無しで良いね?』
「なんで傑には夏油さんってさん付けなのっ!?なんか厭らしい響きなんだけれど!パンケーキミックスは帰るのに急いでて買えなかったの!」
『どっかの誰かさんが敬称つけたら罰ゲームしたからじゃないの?それはおいといて悟、何か夏油さんに言うことあるよね?』
アイマスクの下の表情は分からない。ただ、口元はキュッと口の中を噛んでるのか、蟹の甲羅のへこみみたいな口になってる(アルファベットのHみたいな)から見えない目元も不服なんだろうと想像が出来る。
……昨日と今朝にも言ったはずなんだけれど。
追い打ちをかけるように私は座っていたベッドから立ち上がり悟の元に駆け寄って覗き込む。黒いアイマスクの向こうはどこを見ているのやら。
『悟君?まずお友達に言うことは?』
「あっ、てかキミめっちゃ薄着じゃん!胸とか見えそうなくらいの服にふとももそんなに出していやらしい格好で傑の前に出てさー…ベッドに居るとか食ってくれって言ってるようなモンでしょ!すけべ!」