第11章 その男、心配性につき…。
本当に喧嘩してるんだろうか?と思えるほどに懐かしむような、大切に想い合える友を脳裏に浮かべているであろう夏油は自身の胸に手を当てて息を吐いている。
基本的に良い人なんだろうな、と思えるけれど初見で私を呪霊扱いしてくれた事は忘れないからな。じとーっと視線を送りつつ送信をとっくに終わらせた携帯を降ろす。
夏油は人の良さそうな笑みを浮かべてゆっくりと私の隣で少し距離を詰める。跳ねるように詰める度にキシッ、キシッ、と沈むベッド。座るならここじゃないキッチン前の食卓が良かったかもしれないけれど今更移動をさせるのも…。
なんだか、えっちな映像系の導入っぽい雰囲気が出てきていて私が気まずくなってきた。
「ふふ…、知ってたんだ?近々君プロポーズされたりね?」
にこにこと笑う夏油。どうやら悟の部屋に大量の婚姻届が……明日からの分の婚姻届があるんだろうけれどさ。何を内職してんねん。最近の証人欄のバリエーションが増えてきつつある。七海ばかりだったのが硝子とか伊地知とか。
多分、書いてる人達にもこいつどんだけ攻めてんだよ…なんて思われてるんだろうなぁ…。七海辺りの表情を想像すると苦笑いが出てくる。
『ほぼ毎日結婚しよって言われてるし、婚姻届も一日1枚以上は貰ってます…』
「えっ…それは本当かい?…婚姻届って1枚で充分だと思うんだけれどなぁ…」
驚いた表情の夏油、さっきからこの様子を見るに最近の悟の情報を知らないみたいだ。そういう情報は帰国前や誰かに聞いてるわけじゃないんだなぁ……そうなると海外から戻ってきてまだ悟に会っていないのだと推測ができた。会ってたらもっと自身の事を言うだろうし。
私は隣に座る夏油に簡単に私についてと私と悟の関係を話した。
これには夏油も真剣に聞き入り、最後には口元を手で覆い考えている。
『──あ、それと夏油さん。悟と喧嘩してますよね?その喧嘩の原因を聞きましたよ。
悟には悪いのは悟なんだから謝れと言ってあるんで…』
きっとトラウマものだったろうな、カマキリ。憐れむ視線を夏油に送ると苦笑いしている。
「あー…あれはもう悟が悪いからね。やり返そうと思ったんだけれど時期も時期だし、部屋に何か仕掛けようかって所でこうやって呪霊じゃなかった、ハルカに会ってね…」
『ははは…、呪霊って言ったら次は無いと思って下さいね?』