第11章 その男、心配性につき…。
もう時間も時間だしそろそろ恋人モードから皆を導く教師へ切り替えて欲しい所なんだけれど。
『まっ!そもそも私の部屋に直にアポ無しで来ないでしょ。来てもせいぜい悟の部屋ノックして返事なしで終わるだろうし。ほら、時間時間!行ってらっしゃいの時間ですよ、先生?』
私は片手をゆるく振る。いってきなーって。
そんな姿をじっと見た悟はちょっぴり首を傾げた。
「……なんか今思ったんだけれど…このシチュは新婚みたいだね?キミが見送ってくれるのとかさ?朝のこのやりとりが悟君的にめちゃくちゃ愛おしいんですが」
『はあ……、はい?』
こっそりと二度寝を楽しもうとか、フェイスシートマスクしたりとか悟が居ない内に楽しもうとしていたのに、急にそんな事言われると少しだけ意識してしまう。愛おしいやりとりだとかさぁ…。
そんな事言われたらもう少しだけ一緒に居たい、とか思っちゃうじゃん。
僅かに屈む悟はにこにこして、指先で自身の口を指した。
「ほら、奥さん、行ってらっしゃいのキスして。早くしないと責めるレベルの遅刻になっちゃう!」
『…~~~っ!っもう!…いってらっしゃい、』
断る事も出来たけれど、何度もアタックされりゃ意識だってしてる。
悟にキスすると、離れた唇が耳元まで近付いてねっとりと"愛してるよ、ハルカ"と囁いて玄関から出ていく。
私はぽつんと玄関前で取り残されたまま、顔に熱を感じながら誰にも届かない声で呟いた。まだばくばくと心臓が高鳴ってる。両手を胸に当てれば騒がしいのを手にも感じた。
『……そういう所だぞ、五条悟…っ!』