第11章 その男、心配性につき…。
『昨日食べたのが最後、パンケーキミックスがあったら作ってたよ?パンケーキの元が部屋に無いからフレンチトーストですねー…ってなわけで悟、食べたきゃ出先で買って来てねっ!』
「えー荷物になるからヤダ」
『あ゙?』
満面の笑みでヤダ!と言った彼にじとーっとした視線を送ればちょっと面倒くさそうな顔に変わって、買ってきますよーだ、と仕方なく了承した悟。私は手元に視線を戻した。
卵にしっかりと浸して菜箸でフライパンに移動させると、ジュウ…と焼け始める音と先に敷いたバターの良い香り。
焦がさないように注意しながら、悟を見ずに話し掛けた。
『任務次第って聞いたし高専に何時に来るか私には分かんないけど、夏油さんが来たらちゃんと謝りなよ、悪いことしたのは悟なんだからね』
「あーはいはいウンウンわかってるぅー」
『……28歳の悟くん?はい、はまず一回ね、それから人の話をちゃんと聞きましょうね?』
振り返ると頬を膨らませ、次第に笑顔になる悟。
ははは、と笑い声を上げた。
「大丈夫だって!ハルカが心配せずともちゃんと僕から言うさ!」
『ん、なら良し!』
片面を良い色付きまで焼き、反対側を焼きながら空きスペースでアスパラガスとベーコンを程よい大きさに切った物を炒める横で悟はミキサーをがちゃがちゃ弄っていた。
「ハルカさー、ストロベリーラッシー作ったら飲む?」
『飲む』
「即答。じゃあ作るね、片付けはしといて」
牛乳やヨーグルトなどの材料を入れてガーガーと音を立てながら気分良さげに手際よく作ってる悟を見て、この人本当に何でも出来るな…と思う反面、何でも出来るのになんでこの人は後先考えずに友人の服にカマキリの卵仕込んでるんだよ、天才なのかアホなのか比率をちゃんとしてくれとも思う。
全てが優秀であれば世界にバグでも起こるのか?神様はやはりそういう所を評価低めに設定してるんだろ、とコンロのツマミに手を伸ばす。
火を止めたコンロ。二枚用意した皿にフレンチトーストとアスパラガスのソテー、カットしたトマトを皿に乗せて机に置いた。
その直後に机に追加される、白の比率の多い少しまだらな赤の入ったストロベリーラッシーがコト、と追加された。