第11章 その男、心配性につき…。
92.
「部屋で待機だからって良い身分だよね~!このお寝坊さんめ」
『ふーんだ、呼ばれたらダッシュで行けるもん。今日、私は部屋でのーんびりしとくのだよ、静と動の使いようってね!分かったかね?悟くん』
「先生悲しいな~…悠仁に恵に野薔薇と呪いを祓いに引率するのに、医務室担当だからってお部屋でごろごろする悪い生徒を担当してたなんて悲しいな~昨晩えっちしたわけじゃないから身体が辛いわけじゃないのにさー」
口を尖らせて文句を言ってる悟。
でもこちらは時間に縛られていないのだ。
『ンッフー、お部屋待機が羨ましいのかなぁ?』
部屋着でベッドに寝そべって携帯を操作する私に、シャツのボタンを留めている悟は文句を言っている。
そんな目で見ないで欲しい、はいはい分かったから。もう起きるから。といっても急がず焦らずあと5分くらいだらだらしてからだけれど。
「……」
騒がしい男をちら、と見るとボタンを留める手が止まったままに少しずつ不満な顔から表情が軽蔑の顔へと変わっていく様。
『無言の圧力っ!分かった、支度するから、もうっ!』
そのやや羨ましさと軽蔑を混ぜたような視線に耐えきれず、私は携帯を置いて飛び起きた。昨夜は抱かれていないのでシャワーを浴びる手間がない。その分時間が取られなくてラッキー、くらいに洗面所に支度に行った。
どうせ悟は釘崎達の所か夏油の所か、そのどちらかの方に向かうだろうし部屋にはすぐに戻って来ないでしょ。支度は軽い保湿程度に済ませて悟が居ないうちにフェイスシートマスクでもしてよう。前にスケキヨスケキヨと指差されて爆笑されたから、ひとりになる事がなかなか無い今日がチャンスだろうし。
朝の支度はしても私は制服は着ていない。寝る時の寝間着…ノースリーブにショートパンツのままで、食パンの袋からパンを取り出して耳を切り、フレンチトーストの準備を始めた。
「あれっ……パンケーキじゃないの?僕の最近のお気に入りのやつ」
黒い上着やアイマスクを着けず、シャツにサングラスの悟は冷蔵庫から牛乳を手にとってこっちを見ている。
材料があれば作っていただろうけれど本日の朝食にパンケーキは無理です。無いものは作れないのよ?パンケーキミックスがそこに(引き出しに)なければ無いですね、はい。
卵を混ぜる手を止めて悟を振り返った。