第11章 その男、心配性につき…。
カリカリカリ…ボールペンを何箇所か記入欄に走らせ、返事がないのでそこに悟居るよね?と振り返る。
椅子に座ったままに、青い瞳を細めてじっと見ていた。書類書いてる間とかそうずっと見られるのは恥ずかしいな。
「……ほんと、何度も言うけれどキミが好きだよ、ハルカ。一刻も早く僕だけのハルカにしたいよ」
『それはありがと。何度言われても嬉しいというか恥ずかしいな、』
素直な気持ちで答えてしまって、照れ隠しに頭を掻いた。もっともっと彼が好きになる。次のデートが楽しみで仕方がない。どんな想い出を作れるんだろう?たまには悟に行き先をお任せせずに私も行き先を提案しても良いんじゃないかな?
そうだ、3回目のデートとして水族館とか提案してはどうだろう?悟にニコっと笑った。
『……ねえ、悟。3回目のデートは私水族館に行きたいな!』
しばらく行ってない。ゆったりと泳ぐ生き物達を一緒に見て癒やされたい。ちゃらんぽらんな悟だけれど私が授業してる間に出張行ったり、時々泊まりで部屋を開ける時もある。
悟もきっと疲れてるだろうしのんびりと癒やされながらデートを堪能したい。
私が水族館を提案すると悟はうんうんと頷いている。
「いいよ!でもそれは4回目のデートの話。3回目は温泉お泊りデートだよー?」
……おや?なんだか空気が変わったぞ?
近々私は温泉に泊まりで行くんだけれど?被っちゃわないかな?
『んー、ごめんねー?今週末は私用の予定あるから来週かな?私今週末悟を構って上げられないんだー、本当にごめんね?』
「違うよ?今週末だよー?僕天才だから教室の会話聞こえちゃったんだよねー。
悠仁達は悠仁達で、僕とハルカはひとつの部屋で泊まるのね、それで部屋で獣にトランスフォームしよ」
『なんで温泉お泊りにトランスフォーメーション始まるんだろー?不思議だなー私人間なのに何で獣ー?』
……あれ、なんかおかしいなぁ。
とっても愉快そうな悟はアイマスクを付け直し、人差し指を立てて私を言葉で追い詰めていく。
「温泉で疲れを取って、盛りのついた獣みたいにお部屋で運動いっぱいしようぜ!僕も予約済みだから週末が楽しみすぎるなー!」
『誰かこいつをなんとかしてくれ…っ!』
私の言葉は悟以外に届くことなく、悟は嬉しそうにアイマスク越しに額を撫でていた。