第11章 その男、心配性につき…。
頭突きした額を片手で押さえ、スカイブルーはこちらを見て何を思うのか。少なくとも僕はそこまで悪いことしてましたかね?くらいにしか思って無さそうだな。
ええい、もっと課すか!
『部屋だけじゃ物足りなさそうだね?
じゃあ、1ヶ月キスもえっちも禁止、かつ手を繋ぐのも駄目。あと半年デートにも行かない!
……まだ言わせる気だね、会話もナシ!あと近寄らない事も追加で!電話もメールも連絡手段も一切を、』
「わ、分かったからっ!どんどん畳み掛けないでくれない!?言うよ言えば良いんだろ、明日僕から謝ればさあ!?」
頭突きした場所を撫でながらちょっとキレ気味の悟。
あ、この人ごめんなさいという言葉を言えば済むと思っているな?
頭突き時の様にまた悟の両頬に手を添えると、悟は先に自身の額に手を当ててガードしている。表情は焦っていた。
「また頭突き?結構痛かったんですけど?」
『あのね、謝るっていうのは言葉を口に出すだけじゃないんだからね?ん?分かってるよね?』
「……チッ、龍と虎を受け継ぐ不良っ子め」
『あ゙?私はスレる事なく真面目に過ごしてましたけれど?どこが不良なのかなあ?言ってみなよ?』
虹彩がこっちではなく、左を向いているので視線が合うように私が動けば右側を向く始末。
まったく困った人だ。ひとつため息をつけばようやく私と目を合わせる。やれやれとでも言いたそうな表情で。
「……ちゃんと言うよ。傑にごめんって」
額を押さえる手を退けて、ふざけず真面目に言う悟を見てきっと夏油と向き合えるだろうと確信した。私はセラピストじゃないんだけれどな…合コンでは治癒の出来る呪術をそういう理由として出したけれども。
素直に向き合えたという事で頭突きはやりすぎだったかもという罪悪感もあり、悟の前髪の間から見えるちょっと赤みを帯びた場所。両手で頬は挟んでいるし。
『素直で宜しい。褒美を授けよう』
唇が軽く触れる程度。前髪も退かしていないけれど額に口付けて悟を開放した。
さて、これで一件落着だし七海を治療したって証明書を書かないと。椅子をぐるりと回して机に向かう。書類に向かいながら騒がず静かな悟に対して話しかけた。
『私からは以上です。七海さんの書類書いたら教室戻るから悟は悟でやることやってたら?ほら、教師でしょ。ああ、この後任務かもしれないけれど』