第11章 その男、心配性につき…。
親友と呼べるほどの人との長期の喧嘩。理想の語らいだとか殴り合いだとか…もしかしたら想い出を聞くに女性関係とか聞いたから好きな人の取り合いとかもあったのかもしれない。
悟に喧嘩の内容を聞けば、ちょっとだけ口元に元気が戻った。
「聞いてくれるの?ハルカ。
あのね。傑の部屋に忍び込んでさ~…僕、拾ってきたカマキリの卵をね。クリーニング済の夏服に忍ばせておいたんだよー!」
『……は?』
──思考停止。
私が悟に真面目に語ったのは何だったのか。しょぼくれセンチメンタルな悟は今や思い出し笑い気味に話し始めたのに、私にはちょっと殺意が湧き始める。
「そしたらさ!夏服取り出す時期にぬるぬるぬるーっていーっぱい出てきちゃってサ!もー傑ガチで怒っちゃって!激おこ。超・激おこプンプン丸。あっ古いか!
あの傑の怒りっぷりったらもうっ!仏の残基3つ減らした後みたいでさー!」
『謝れー?明日帰ってきたら絶対に悟から謝れー?火を見るよりも明らかに悟が悪いからね?』
ブチギレそうになるのを我慢する。夏油傑さん。あなたの怒りがよく分かります。怖いよね……問題児に誠意を持って謝らせます。
悟になんとか改心してもらいたい所だけれど、アイマスクで大半の表情を隠した割にややしゃくれ気味に悟は文句を垂れている。
「えー?でもさー僕悪戯したの忘れて、忘れた頃に発動したトラップだし今更感じゃん?時効切れた頃にブチ切れとか無いよね?」
『……クローゼット?からカマキリがぬるぬるぬるーって出たっての、悟は笑った?』
「爆笑しすぎて腹抱えて泣いた」
はい、アウトー!この状態でも認めないのか!と両手に挟む悟の頭。
アガリビトの時の非術者にやったような、気絶する程じゃないけれどゴン、と頭突きをした。額を押さえつつ、アイマスクを勢いよく取り外す悟。
「いっだぁ!ちょっと何すんの!」
『何じゃないでしょ!夏油さんにちゃんと悟から"あの時僕がやった悪戯は度が過ぎていました、心底反省しておりますごめんなさい!"くらいに謝らないと私の部屋入るの禁止ね!』
「はぁー!!?」