第2章 視界から呪いへの鎹
ほうほう、と大げさに相槌を売ってる、黒尽くめの目隠しさん。
質問攻めが止まらない。腕を組みながら、私にやや前傾姿勢で聞いてくる。
「ねぇ、キミ。今から買い物とか?」
『……まあ、そうですけれどその前に美容院に…って』
「美容院?へー、髪長いもんね。……うん?もしかして……髪切ったりパーマかけたりするのかな?」
初対面で随分と馴れ馴れしいなぁ、と思いながら個人情報を漏らさないように気をつける。
まだ、警戒はしてる。だって怪しいもん。人通りが多いから変な行動はしないとは思うけれどさ。
『髪を染めようかなって…』
「へー、今のキミは茶色だから……金髪?それとも黒とか?」
『白ですけれど』
男はひとりパントマイムみたいな動きを止めて、私の発言を繰り返した。
まあ、白にわざわざ染めるのなんてそうないよね。
「へ?……なんでわざわざ白?」
『なんでって……』
私の髪は長い方。茶色というか亜麻色。年齢は23。
割と最近になって気が付いたのだけれど、若白髪が出てきた。栄養が足りないのか遺伝か疲れからか。出てきたもんは仕方ない。
そんな事をこの見知らぬ人に言うのとか、言う理由も無いんだけれど。
『白いのが出てきてるから?』
「えっそんな事で?だったら普通、それを隠す色に染めない?キミ変わってるね~…あっ、こういう時ってこう言えば良いのかな、面白ぇー女…的な?」
『(なんだこの人…)急にというか、白くしとこうって感じで…──』
見えてるのかどうか知らない、目隠しの男は私の左側を凝視してて、誰か居るのかな?と私は左側を少し振り向いた。
……立ち止まる人は居ない。一体何を見て…、
ブワッ、と一陣の風が吹く。近くを歩いてる女性がわっ、と声を出してスカートを抑えていた。そこから視線を目隠し男に移すと何かを摘んでにこにこしている。
「キミ、静電気体質?また着いてたよ?」
じっと指先を見ると白い毛。でも明らかに短いし。私のじゃない…ような気がする。
疑う目で男を見た。
『短いしあんたのじゃないの?さっきの風で飛ばされたとか…あんたも髪、白いじゃない』
私の場合髪結んでるし。風の方向はこの男側からだったし。じっとその人を見れば、そうかなぁ?とわざとらしい態度を取る。