第2章 視界から呪いへの鎹
1.
──その出会いは突然であった。
歩行者天国。
アスファルト上を私はひとり美容室へと向かって歩いていただけなのに急に肩を叩かれた。
というか掴まれたというべきか。私に接触した際、結構強めの力であまりにも堂々としていて……始めは私物を落としたとか、私の知り合いかな?という気持ちで後ろを振り返ったのだけれど。
そこに居たのは全く知らない、でっかい不審者だった。
『不審者…?』
「不審者ぁ?ええー…キミさぁ、本人にそれ言っちゃう?」
白髪の髪に黒い目隠し。背は高く、服は上下とも黒尽くめ。
どっからどう見ても…。
『うん、不審者ですわ……』
そうとしか言えなかった。
その目の前の目隠し不審者さんは大げさに両手を目の前に出して私の不審者という単語を拒否した。
「キミの肩に着いてた大きなゴミを払っただけなのにー?そこは感謝しても良いんじゃないの?」
『えっ、肩に…?』
人通りは良く、周りを見れば行き交う人々はど真ん中に立って対話している私達を避けていっている。
おまけに野外であるから、どんなゴミかは分からない。きょろきょろしたら、風で飛んでっちゃったんじゃない?と追加されてしまった。疑ってしまったけれど、ゴミ乗せて今から行く美容室や買い物なんかしたらそれは恥ずかしい、かも。
少しその人からのけぞった体勢を立て直して、その目隠し旧不審者さんに向き合った。
『それは……ありがとう御座います…?』
この人の目元は見えない。こっちから見えないけれどこの人からは見えてるんだろうか?
その人は口元でにこにこと人の良さそうにしている男性。顔がこうも隠れてしまうと感情が読み取れないけれど、態度がまるでピエロとかきぐるみみたいだ。
「いーえ、どういたしまして!
けど、随分と大きな埃乗せてたけれどキミ、ここに来るまでどこに行ってたの?」
少し苦笑いしてるこの人。
どこにっ、て…。
黒尽くめの服装、目の前の人の腹辺りを眺めながら考える。
家から出て、電車に乗ってここに居る。どこにも寄っちゃいない。
『……普通に、家から出て電車乗ってここ、ホコ天に来たんですけれど…』
「……へー、廃屋とか路地裏とか寄ってない?」
『廃屋?路地裏……いいえ、そんな事は…』