第11章 その男、心配性につき…。
その名前に聞き覚えがある。新鮮な記憶…昨日聞いた人名。
私は観覧車でのあの流れで、不慮の事故とかで…って勝手に思ってしまっていたけれど…なんだ生きているんだ…!
現在の様子は分からないけれど、10年ほど前の写真から見ると好印象な人だった。
でも、なんで悟はその親友から私を隠したいんだろう?
『その人って……、あっ』
聞こうとしたタイミングで、ブルブルと震える携帯。その液晶に表示されるのは七海という文字。朝からなんだろ、と電話を受けた。
『…はい、みたらいです』
"七海です。現在医務室のドア前に居るのですが張り紙が有りまして…見たことのある番号だな、とは思いましたが……"
連絡って紙貼られてるんかい、私の番号も晒されてるんかい。
医務室前という事は怪我でもしたんだろうな、と私は椅子からギィ、と音を立てて立ち上がった。
『医務室前…という事は怪我されてると?…今教室なんですぐ医務室に向かいますんで…、』
口を押さえる虎杖や会話の邪魔にならないように急に黙った4人に、私は携帯を指差し次に医務室の方向を指すと虎杖はサムズアップし、伏黒と釘崎は頷き、悟は手を振った。
それを見ながら私は医務室に走る。携帯を耳に当てながら。
"怪我といっても昨日呪詛師に受けた怪我の包帯を取り替えにと思って来たのですけれど"
『じゃあ今日以降包帯要らない様にしますねー』
"……それだと一番楽で助かります。ではお待ちしてますのでゆっくりで良いですよ、血は止まってますし"
ぷつりと切れた携帯。私は携帯をしまって、そのまま医務室にまっすぐと向かっていった。