第11章 その男、心配性につき…。
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校舎の窓は全開でふんわりとした風が時々室内に入ってくる。かつての学生時代と違いクラスの生徒数が少なくて賑やかじゃない分これがまた余計に眠気を誘う。のんびり歩く悟の背を押しつつ、そして悟を置いてけぼりにしながら(どうせ遅刻常習犯の担任だし)寮から移動してきたばかり、3人に挨拶してすぐだってのに。私はふあ…っ、と口元に手を当てて欠伸を隠した。
予感はしてた、休みに休まず呪いを祓ったりめちゃくちゃに遊びまくっていたから週の初めから疲れていた。
首を回せばこき、と音もなる。気分は既に週末だった。
「昨晩はお楽しみでしたね?」
絶対ににやにやとしながら言ってるなと確信する位に笑い声を含んだ口調の虎杖の方向を見た。うん、当然の如くニヤニヤしてたわ。
悟が教室に入ってくるのを待ちながら、今日は全員自分の席に着席していた。その釘崎も含めニヤついている虎杖に私は自分の肩を揉みながら言う。
『なーにがお楽しみじゃい、昨日は昨日で任務だったんだよ、一昨日と同じパターンのながら任務!地方の!
……移動距離長すぎて夜は早々と爆睡だわ』
事実、地方からバスに乗り電車を乗り継ぎ、新幹線を使って(移動中に夕飯を済ませ)高専に戻ってきたのは夜。
両手の指全てを動かしながら厭らしく揉む手つきでベッドに入る悟に私はきっぱりとNO!と言い放った。
昨日だってしてる。一昨日だって。疲れた体でそこに夜の運動はキツい。
ベッドの横、拒絶されハの字眉でのクゥーン……という悲しい声を出す男の頭をぽふっ!と撫でて私はぐっすりと眠らせて頂きました…が、早めに寝ても疲れが取れないんだな、これが。
式髪の呪力保有量が0の状態で呪いと戦ったにしろ、そんなに不調が長引くものじゃない。普通に遊びすぎでの疲労。
次の休みはデートは止めて癒やされるような事をしよう、例えば…そう、温泉とか。
温泉に行きたいって本音を黒板をぼーっと眺めながらに私は口に出していた。
『あ゙ー…次の休み温泉行って来よう…』
「あら?女同士行く?温泉って言ったら疲労回復だけじゃなくて美容よ、美容!私も行きたいしさ」
ひとりで行動出来ないでしょ?と言う釘崎の方向を見て思わず笑みを零した。それが良い、全ての休みを恋人と過ごさなくっても良いし。クラスメイトと過ごすのも良いんじゃないかなー。