第10章 末裔の貝殻は開くのか?
オレンジの室内に染まる中での少し背を丸めた悟の言葉は重くて。片手の携帯を力なく落としそうなくらいにちょっとだけ弱々しくも感じた。
『しばらく悟と過ごしてきたけれどそんな事知らなかった…ねえ、その悟の親友って今は…』
ふ、と空気の漏れるように短く笑い悟は携帯をしまう。
「今はね、うん……ここからずっと遠い所に居るよ。
最後にさ、僕はあいつと喧嘩し…──」
ガクン、と揺れて止まる観覧車。
悟の会話が止まり、私は中腰気味に立って冷たいガラスに頬を付けて下を見る。
『……なんだろ?』
事件かな、事故かな。場所が場所だから高すぎて真下が見えない。
ただ一部区間の停電のように見える。観覧車のエリア含む場所の電気が消えている。
「停電だね」
『うん、停電だ』
…というか。
私達が止まったのは丁度真上。一番高い場所だった。
「そうだハルカ。ここ観覧車の天辺じゃん?」
狭い室内のベンチに向かい合い、悟は私側にやや前かがみになっていて、言葉で言わずとも片手でおいで、と私を呼んでいる。
言葉無くとも態度で分かった。悟は自身の唇を指して、ン!と短く唸ってる。
それは観覧車の頂上だからという誰が始めたかのジンクス。思わず笑っちゃった。
『……はいはい、』
私も少し前かがみに、がっつくようにこちらに体を傾けている悟と唇を重ねた。
背に回された腕は強くてよろめくように悟に倒れ込んで…彼の膝に跨ったままに止まることのないキスの嵐。
心が満たされる反面、停電が起こる前の悟の友人の話はきっとタブーなんだろうと私は理解した。
……きっとその悟の親友はもう、ここには居ないんだって。