第10章 末裔の貝殻は開くのか?
制服はカスタマイズをあまりしていないようで制服自体は目立たない。既にやんちゃ坊主全開なのが静止画から漂わせている。……ちょっとだけ今より髪を短くしてて、当時の悟も格好良いって思う。
その隣にはキリッとした顔の黒髪の青年。片方の前髪は垂らし、他を全てひとまとめにしているのか、頭上に纏めている髪。制服は下がニッカポッカだろうか…足元が膨らむタイプだった。
その画像をまじまじと見て現在の悟を向けられた携帯画面から背後の現在の悟を覗く。私と目があった悟は携帯を自身の膝に下ろした。じわじわと回覧車内を橙に染めていく夕日が哀愁を漂わせてる。夜が近付いてくる足音がする。
「僕の隣に映ってたのが夏油傑。硝子と同じく同級生。
僕、傑、硝子も居て僕らは3人でワンチームだったの。傑と僕でねナンパの勝率を競ったりさ~!」
『高専時代から女の子泣かせてんのねー…』
前に遊んでたって言ってたし。しらーっと見てると手をぶんぶん振って昔の話だよ?と付け足す。分かってるやい!
「あいつのほうがモテんのよ、なんでかな~?」
わざとらしく首を傾げる悟。理由は自覚してるんだろうけれどさぁ。
『それは誠実さじゃないの?
私も画像ぱっと見てこの夏油さんに感じるのはさ、一途というか大切に…仲良い関係とかだったらすごく優しくしてくれそうだなーっとか、女の子をリードしてくれて嫌なことを強制的にしないとか、ケダモノ性がなさそうっていうかそういう………
いや、今は違うよ?悟と付き合ってる通り私は悟が好きだもん』
夏油傑という人物をぱっと見て良い印象であったと口に出し始めれば悟がサングラスから覗かせる裸眼をかっぴらいてこちらを見てる。褒めれば褒めるほどに文句を言いたげな表情に変わって行くもんだから褒めるのを切り上げたけれど。
……高専時代はそうとして。今はどんな大人になってるのやら。きっと悟よりももっと大人の道を進んでるに違いない。硝子といい夏油といい大人に成長していき、28歳児として取り残されてる感ある悟、ねぇ…?ちょっとぷぷぷ、と含み笑いしてると悟の頬がぷく…っと膨らむ。
そんなフグのように頬を膨らましてた悟からゆっくりと空気が抜けていき、彼は視線をゴンドラ内の足元に落とす。それは落ち込んでるみたいで…。
「……傑はね、僕のたったひとりの親友さ」