第10章 末裔の貝殻は開くのか?
自分たちのあと3つ後ろは…と悟と一緒に振り返れば、学生辺りかな?青春真っ只中の初々しいカップルというか。悟と目を合わせてお互いに黙る。きっと同じ考えなんだと思うけれど、私達は今目の前に来るやつで充分。透明な観覧車の"ジンクス"は彼、彼女らに譲るべきだろうし。
ゆっくりとやってきた赤いゴンドラ。悟は私に手を差し出して微笑む。
「ほら、ハルカ乗るでしょ?お手をどうぞ」
『ん、』
大きな手に重ねた手。そのままに手を引かれて乗るのは赤色の観覧車。
入って自動で閉まるドアとゆっくりと上昇していく狭い一室。
乗って早々に悟はふふふ、と笑った。
「さっきの高校生くらいの子ら、うまくいくと良いね~!あれはきっとまだ手も繋いだことのない感じだよ」
ちょっと立ち上がり、僅かに揺れるゴンドラと地上側を窓に張り付いて覗いてる。
「おっ!……ははーん?初々しいねー服をちょいと摘んで乗ったよ!」
『これ、悟、プライバシー!……んっふ!これ天辺まで上がったら告白するのかねぇ~?』
「とか言ってキミもノリノリで見てるじゃん…」
対面してたのが私側に来ると、座る私を跨ぐようにベンチに膝立ちする悟。座席の正面を向けば悟の腹なんだけれど、私も振り返るように横目で、悟と共に地上から昇りだした初々しい男女を観覧車の内側から覗き込んでいた。
『……これ、観覧車に乗ってどうなると思う?』
覗き込んだままに悟に意見を聞いた。私よりも恋愛経験が多いから色んな知識があるだろうし。
口元に笑みを浮かべたまま覗き込んでる悟。
「告白かキスかどっちかだろ?観覧車のジンクスってのは。あの様子じゃキスは高難易度…無理とみた。今はお友達の関係で、付き合って下さい!っていう告白なんじゃないのかなー?」
『ひゃー、甘酸っぱい青春の1ページだねー』
見辛い位置に来てしまったので悟は膝立ちするのを止めて目の前の席に大人しく座る。随分と楽しそうに笑っていた。
「ねっ!せっかくだからさー、チキチキ第一回ふたりっきりの告白大会を開催してみない?僕ら初心に帰って告り合うの。
どうよ?テーマは告白、シチュエーションは自由となりまぁす!」
急に何を開催してんだ、それに第一回って第二回や第三回もあるのかとツッコミたい所だけれど。