第10章 末裔の貝殻は開くのか?
89.
頭上をずっと時計回りに止まること無くゆっくりと回り続けているもの。その大きな、少人数が乗り込める丸いゴンドラは黄色、橙、赤…といったグラデーション順になっており、全体の2つのみ透明なものがあった。
その乗り物…観覧車の列に悟と並んで順番を待つ。都心からわざわざ地方まで来てしまったから帰りを考えるとどうしてもこれが今日の遊園地の締めくくりとなる。
地上から見上げた空は暖色に向かう事無くまだ水色だった。
お化け屋敷の後は足をぶらりとさせたままにぐるんと一回転する絶叫系に乗り、絶対にこういう所に来たらやるだろうな、と思っていたコーヒーカップで調子に乗った悟が高笑いでぐるぐると回転させ、ふたりともしばらくベンチで休み(28歳児をこの日一番に発揮した瞬間だった)のんびりと小型遊覧船に乗り、軽い昼食のあとは細々としたものを攻めていった。
そんな童心に帰れるような楽しい時間も観覧車で終わりを告げる。夢の国ではなくとも魔法が解ける時間。また観覧車を見上げたら空がちょっぴり寂しい色に染まり始めてる。
そんな遊園地での締めくくりといったらやっぱり観覧車でしょ!と悟に引っ張られてこの待機列に来たわけで。
この後はバスと電車と新幹線という帰宅までの乗り物アトラクションがあるんだよな……結構疲れた。帰りの移動中に寝て乗り過ごしたらどうしよう。それに昨日今日と遊びまくってしまったので明日は朝から疲れてるかも知れない。
「──でさ、七海にこう言ったわけよ」
『なんて?』
「目の付け所、サングラスの奥」
『眼球の位置じゃん』
順番待ちをしながらいつものような雑談をしていれば、始めは10組ほど並んでいた順番待ちも私達が先頭となった。ゆっくりと乗り込み口にやってくるゴンドラを眺める。
悟はちょっと残念そうに、あー…と声を漏らしてる。
「透明なやつは3つくらい後だったね」
『こればっかりは始めから計算でもしてないと乗れなかっただろうね』
透明なゴンドラ。それに乗ると恋が叶うというジンクスがあるとかないとか。あっても私達は恋人であるし、既に叶っているからどちらかというと景色とか物珍しさというか。