第10章 末裔の貝殻は開くのか?
「そんなに引かないってば。キミの素直な一面を見れたから僕は嬉しいかなぁ?あっ、でも将来的に喧嘩したとしたらちょっと怖いなー…やらかしたらぼこぼこにされちゃうねぇ…」
出口へと進んでいたらぶにっ、と足元のクッション生地の床に少し驚きながら私は口を尖らせた。
喧嘩したとして悟は無限下呪術を使う。無限で拳が近付く事を許さない事だって出来るんだし。
『喧嘩する事態になるの想定ってか、無限で防いじゃうでしょー悟はさ?』
「長く一緒にいればきっといつかは喧嘩くらいするよー、それに僕はハルカと一緒にいる時はキミからの事はなんだってオールオッケーにしてるから。
キスはもちろんツッコミも…ビンタだって受け入れてるけれど?」
薄明かりで自身を指差す悟を見て、あー…と声を漏らしながら、私はこれまでを振り返った。確かに、高専入る前の体術の訓練だとか、入った後の稽古や補習ではたまに無限で防ぐ事はあっても私生活では無かった。
無限で防いでるんだと説明された時くらいかな、それ以外は受け入れられていた。
長細い天然の光が、歩を進める度に大きくなっていく。そろそろ出口、チープな仕掛けも畳み掛けるようにやけになった驚かし方をしているけれど気にならない。
『私にその、えっちな事をしつこく迫った時に平手打ちしたのとかも受け入れたって事はただ悟がマゾヒストでしたって事じゃないよね…?』
頬を赤くしたのは2度程あった。避けられるし、回復も出来るのにそのまんまだったって事はそういう事なんじゃ…?と心の奥に芽生えた疑いの心。
そんな目で悟を見ると、空いた手でないない、と拒否された。
「ちゃうねん。どちらかというと僕はサディストだと自覚してるけどハルカに関してはなんだって愛おしいかな~」
薄明かりから脱出して昼間の明かりが悟を照らす。
少しずらしたサングラスから見える青空のような瞳。その悟の表情はこちらへと慈しむように向けられていた。
なんだって愛おしい、だなんて。その視線が眩しくて逸らす。