第10章 末裔の貝殻は開くのか?
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ずんずんとやや大股気味にお化け屋敷の中を進んでいく。お化け屋敷の中は一本道だけれどあちこちに仕掛けがされていて、薄暗い中足元にクッションが設置されていたり複数のヒモが垂れ下がる暖簾が設置されていたり、自分が動くだけで引っかかるトラップもあった。
……流石に一回目の落ち武者君で驚いてるからちょっと驚く程度だけれどあんなにビビらないし。斬られた首の模型が転がったりする仕掛けも電源が入ってると知ってるからもう大丈夫。呪いの気配はもう少し先からする。
『……なら、出口から入った方が近かったのでは…?』
速歩きで進む私は思わず口に出す。距離的には入り口から行くよりも出口からの方がきっと近かった。それからもしも効率を求めるのならふたり居るし出口と入り口それぞれから挟み撃ちした方が良い。帳も出しているのなら尚更の事。
立ち止まるとじわじわと感じる気配。うん、そうだった私だからこそ呼び寄せてるんだったか。鳥肌が立つ程じゃない呪いの気配。きっとそんなに強くはない…お化け屋敷は怖いだとか、吊り橋効果を狙ったカップルだとか罰ゲームだとかトラウマだとか、そういったものがここに集まってるんでしょ。遊園地で一番、恐怖の想い出が集まる場所だもん。
再び進めていく私の足は早足で。
……さっさと祓ってこの場から出て悟に合流しよう、出口あたりで待っていれば良いやと考えている。もし今悟の元に戻ったら物陰に隠れて私を驚かす28歳児モードになってそうだし。
彼は眼が良い分、私が近付けば物陰に待機するという行動を絶対にする…!っていう謎の確信が私にはあった。だからぜーったいに戻らない。
足元の急な人工芝?っぽい区画がザリッ、と靴を鳴らした。そういうトラップはもう良いっていうのに多分びっくりしやすい人はこれだけでも驚くんだろうな。
……で。この先に呪いが居て遭遇したらの話。
この前の領域展開をしたお陰様で白髪化した式髪は少ない。そうすると微々たる呪力を纏った体術か、触れてる間自身を痛めつける呪力で焼くか。
薄暗さからただの暗闇の中、奥に見える照明の、オレンジの薄明かり目指して進む……気配までかなり近い。