第10章 末裔の貝殻は開くのか?
「じゃあ行こうか。怖かったら僕にぎゅーっと捕まっても良いよ?」
『ははっ、まっさかー』
チュロスも無くなりフリーになった手。その手を私に差し出して私はその手に自身の手を重ねた。少しばかり初めての任務を思い出しながら皮肉を交えて笑いかける。
『そんなに怖くなんて無いでしょ、だって子供騙しのお化け屋敷でしょう?帳の降りた廃校の一人体育館よりはマシ』
「えー?そんなに怖かったならあの時僕に電話してくれれば良かったのに~…」
指が交わり、手の平で体温を共有しながら歩みだす。数歩先のスタッフに悟はポケットから何か折られた紙を渡しスタッフは急いでお化け屋敷の入り口にチェーンを張り出した。
出口は開いたまま。
それは多分まだ中にお客さんでも居るのかも知れない。受付のスタッフ以外ももうひとり追加されてばたばたとしてる。
『あの時はひとりでやってこそだろうから助けを呼ぶとか考えて無かったよ』
皆も待機で私だけって事は試練みたいなモンでしょうし。
監視カメラの電源を~…と指示するスタッフを視線で追う。一応帳降ろすんだけれどなぁ…。監視カメラがあろうか無かろうが、帳は隠してくれるからさぁ。
スタッフのお化け屋敷の営業を一時的に停止する慌ただしい作業を待ちながら悟は、そういえばさ…と続けた。
「龍太郎君の未遂事件は置いといて、キミって戦闘中に誰かに助けとか命乞いとかしないタイプだよね」
『生きる事は優先するけど敵に命乞いはしないよ、もし死ぬ瞬間だとしても……でも、もしも自分じゃどうも出来ない時だったら敵に情けを乞うよりも…』
見上げた顔はうっすらと笑ってる。
『悟にだけは助けを求めるかもね』
信用も信頼もしてるし。
いつか聞いた、七海の様に語るとすればそれ。尊敬はしてません!って続くのだろうけど。今はそれを言ったら後が怖いから言わないでおこうっと。
ちょっとだけ、きゅっと繋ぐ手が強く握られる。悟は優しい声で囁いた。
「……そうならないように気を付けなよ、ハルカ。でももしも助けを求めてきたら絶対に駆けつけてあげるからね」
『ありがと、私もそうならないようにする。というか自分から危険な事に首突っ込まないよ、面倒くさいしね』