第10章 末裔の貝殻は開くのか?
86.激裏
ちゃぷっ、と湯船の表面が揺れる。
風呂場でするとかどうすんのって話。濡れた髪をまとめ直して頭上に固定する。ぽたぽたと髪を伝って落ちる水滴、そろそろ少し切るのと、伸びた分の染め直しに行かないとな、とまとめ髪から脱走していた髪を合流させて纏め直した。
両腕を頭部へと上げて作業する私をハミングしてじっと観察する男、悟はここもはみ出てる、とちょっと手伝う。その伸ばした手が首筋に張り付く髪を持ち上げるのだけれど、触れただけでもう既に意識してしまった。宣伝通りならお風呂場でするって事。
いつからだったか、互いに肌を重ねて何回目からの入浴時からはお互いに身体を隠すことは無くなってた。
「~~♪」
いつもと同じ様に機嫌良さげな悟は私と視線が合うとにこ、と笑った。
「よし、髪を纏め終えたなら……じゃあしよっか!ソーセージパーテイー!」
『ソーセージパーテイーはしねえよ?』
「ちぇー、ラストシーンみたいにズッコンバッコンしようと思ったのにー」
口を尖らせながらザパァ、と湯船から立ち上がる悟。私も湯船から出て、浴槽の縁に洗い場に足を出すように座った。
寝たりしないってことは立つか座るかだな、とは察してる。悟の青い目を見上げた。
『……で、お風呂場ではどうするんです?先生?』
「ン゙ッ、こういう時に先生呼びは止めてー?興奮しちゃうから」
『それ聞くと事案かな?と思っちゃうわ……』
手の甲で口元を恥ずかしそうに一度覆った悟は私に手を差し出す。その手を取ると私を立ち上がらせた。
微笑むだけなら顔も雰囲気も良かったろうに、彼は五条悟という男。口を開けばやはり最悪で。
「まず勃起しなきゃハルカの中に入らないよねー!フニャフニャじゃ無理!」
『マイルドにしろと何度言えば……』
「半勃ちまで来てるからもうちょっと…なんだけど」
私の腰に悟の手が触れた。そして首の後ろにも。
どきどきする。どうしてだろう?今日のデートの反動かなぁ…。
楽しかった事も、ちょっとえっちなDVDのラストシーンも…私が元カレに出会ってそれで嫉妬してくれた事も。普段感じることのない新たな刺激のせいか、今から抱かれるって事に期待をしちゃう。
悟のじっとりとした熱っぽい視線にやられそうになりながら、待ちきれなくて私は悟の唇に重ねた。