第10章 末裔の貝殻は開くのか?
今、こいつなんつった?思わず耳に手を当てて聞き返してしまった。すると悟は手に黒い布の袋を持ったままに笑顔で繰り返す。
「ソーセージパーテイー」
『はぁ~?』
「ソーセージパーテイー」
『そんなに言わずとも聞こえてるわっ!私見たこと無いけれど知ってるよ?やばいやつなんでしょ!?』
「ん~?見たことないのに何で知ってるのかなー?ソーセージ達がパーティーする楽しいお話何だけれどな~?何がやばいのか、その可愛いおくちで言ってご覧?」
こ、ここ…こいつ…っ!
言うに言えない、ぐぬぬ…っとためらって口を開こうにも悟はイジワルそうな笑みを浮かべてハミングしながら袋から借りてきた、ハードケースをチラつかせた。
ソーセージパーティーとはCGアニメーションの映画だ。子供は見ちゃいけないやつ。予告程度で見たことがあった。
悟はハミングしながらに私からくるりとTVの元に足を進め、てきぱきとケースからDVDを取り出してプレイヤーに突っ込みだす。
おい待て、私はソレを観るとは言ってないんだけど!?
戸棚から急いで悟の行動を止めようと伸ばした手は空中のままに、いくら体重を掛けるように伸ばそうとも悟に届かない。
こ、こいつ…!
『こういう時に便利に術式使ってー!無限引っ込ませろ!』
「あっはっは!見たことないなら丁度良いじゃーん!ねっ、観よう観よう!どうやばいか説明出来ないなら尚更、見てしまえばどんな作品か人にも説明出来るでしょ?」
凄く無邪気に笑う悟は再生ボタンを押して、伸ばした私の手を取って座らせる。
観ないという選択肢はないんか、と私達はそのまま流れで観ることになってしまった……。
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スタッフロールも流れ、DVDの取り出しボタンを押した悟。
私はこの作品を見ないで偏った評価をしていたみたいだった。
『たまーに下ネタが入ってきていたけれど。意外と深いテーマだった……うーん、視点の違う、これは新世界だね。食べ物に感謝っていうか』
終始すけべな事が行われているかと思いきや、食べ物達の葛藤が描かれた作品だった。
作品でそう描かれていてもでも食べ物であるから私達人間は彼らを食べてしまうんだけれどね…。
私の言葉に悟はうんうん、と力強く頷きDVDプレイヤーから円盤を取り出す。