第10章 末裔の貝殻は開くのか?
『悟に嫉妬される程に、誰かに取られたくないって思われる程に……その、私がただ自惚れてるのかもしれないけれど悟に愛されてるのだとしたら、私は先輩の所には行かないよ。というか今の私は悟が好きだから、先輩が好きなわけじゃないんだから行くはずがないんだけれど』
見開く眼は私を捉える。そしてふにゃりと表情は柔らかくなった。
「ほーんと!……オマエの時々ストレートになるそういう所、俺は好きだわ!」
元気になっていつも通りの悟になって安心したら笑顔になってしまった。他の来園者には互いに手を繋いでにこにことしてるカップルに見られているかもしれない。
重ねた手を退けると、私の指を掴んだ悟の手はするすると指の間に指を入れていく。さり気なく恋人繋ぎになっていた。
皆でわいわいと過ごすのも楽しかったけれどこれはこれでようやくデートらしいというか。
……さて。ここで甘いままに終わらずにいつものぶっ飛んだ方向に行くのがこの男。
私の手を引いてずんずん進むは、かつて付き合った先輩の後ろ姿。嫌な予感がする…っ!散歩中に急にリードを引かれた飼い主の如く悟が先に行かないように制止した。
『ちょ、ちょっと悟っ!一体何を考えてんの?』
「キミの元彼に僕らのキス写を撮って貰う!思いっきりディープキスしてるやつ!」
『本当に何考えてんのっ!するわけないでしょっ!いい加減にしろっ!』
ちょっとスネて口を尖らせた悟。
その引く手はまた別方向へと向いて、もう一回周り直そうか!という誘い。
私は頷いてそのままに悟ともう一度動物園をのんびりと周った。