第10章 末裔の貝殻は開くのか?
「キミが昔付き合っててとっくに別れてるのに今更になってまた狙ってる男についてなにか言いたいことがあるの?キスもえっちも出来ずに恋人を解消しても、僕よりも先に好きになってたって事実は消えない男についてさー」
すらすらと話してくる悟がめっちゃ怖くて口が挟めないわ。
人がだいぶ少ない、動物すら展示されていない南国の木の下で悟は立ち止まる。私も悟の手が最終的に肩に落ち着いていたのが、止まった事によって離れたのに気が付き、遅れて止まって悟を振り向いた。
とても深刻そうな表情をしていてふざけて聞ける状況じゃない。
そっと伸ばされた手は私の手に触れ、私の指先を掴む。悟の手の平は少し汗ばんでいた。
「ハルカの青春時代に僕は居ない。反対に僕の青春時代にハルカが居ない……まあ、当たり前だよね、ちょっと年離れてるもん。
そのキミの楽しかった時にキミがどんな風に綺麗だったとか、どういう友人関係だったとか、放課後どう遊んでたとか好きなスポーツも苦手な先生もどんな恋をしていたかなんて僕は知らない。
少しでもキミを知ってて、僕よりも先に付き合ってキミと過ごしてるキミの先輩に僕はね……かっこ悪い事言ってしまえば、はっきり言って僕は嫉妬してる。
その、オマエを誰かに取られたくない…」
ちょっと強められた手の力。彼も嫉妬する時もあるんだな、ともう片手でその私の指先を握る悟の手を優しく包む。
見上げた悟の表情は心配そうにも見えた。
『そういう話はこれから先に知っていけば良いよ。私が悟を知っていって、悟が私を知っていけば。ちょっぴり年齢は開いててもそれが並ぶ事も追い越すこともない…、差がいつまでも縮まないもんでしょ?』
「ハルカ…、」