第10章 末裔の貝殻は開くのか?
好奇の視線はクラスメイト3人だけじゃない。殺気というべき気配がどでかくひとつある。そっちを見たくない…!めちゃくちゃ怒ってるだろうなー…。
随分と幸せそうな先輩は首に下げたネックレスの指輪を出し、爽やかに歯を見せて笑う。そして仕事用だろうか、くしゃくしゃなメモ帳にペンを走らせてそれを千切り、私に押し付けると走って仕事に戻っていってしまった。
そのメモを覗くクラスメイト3人。
「あれは既婚者なのに確実に狙ってるわねー普通連絡先まで寄越さないわよ。どうすんの?この流れだと昼ドラ第二話の次回予告入れるべきなんじゃない?」
「あの人大丈夫?五条先生に見つかったらヤバない?」
「それならもう背後に居るだろ」
色んな意味で特級な気配がする。振り向きたくない私を囲う3人が私から捌けていく。
私を見て虎杖はははっ!と短く笑った。
「みたらいカイジの顔みたいになってんだけど」
「馬鹿、五条先生にとばっちり食らうぞっ!」
私の肩にちょっと強めの衝撃、そしてパン!という悟の手が乗った音。私の片手に持っていたメモがむしり取られて視界の中のその大きな手の平の中で術式により一瞬でくしゃ…と米粒レベルにされる光景……その塵は風と共に発散されていく。
うきうきとしていた3人(というか主に虎杖と釘崎)は空気を読んだ。私はまだ悟を見上げられない。はっきりいって怖いわ!
「……はははっ!では一年生の3人とも、楽しい動物園はこれにて現地解散ね!ここからは僕達ちょっと人生の進路相談してくから!……ね?ハルカ」
『……ハイ、ソウデスネ』
見上げた悟のサングラスの奥は笑っちゃいない、口元は爽やかに笑ってるのにね。ちょっと着いて来そうな虎杖の首根っこを掴む伏黒を見つつ私の背にぱん!と触れた手にびくっ!と驚いた。そのままに押され進められる中で3人を見ると全員が真顔で親指を突き出している……"幸運を祈る"…と。
置いたと言うか服を掴みながらに近い、手で押すように黙ったままで歩まされそのまま数分が経った。いい加減この空気がやばい、おっさんみたいなカンガルーとかじっくり見てる余裕がない。
『あのさ、悟…』
「ん?どうしたの?さっきのキミの先輩の事についてかな?」