第10章 末裔の貝殻は開くのか?
即答する悟を見て、私は虎杖や釘崎と視線を合わせた。
ふわふわドリーミー空間が呪術師としての任務という空間へと早変わりしてしまった。任務と書いてデートとルビを振ってる。
「えっデート場所に任務とか引くわ、公私混同じゃないの?」
「みたらい可哀想」
手作り感溢れる木で作られた塀の柱に悟は肩から寄りかかる。
足元を交差させた際に砂がジャリ、と音を立てた。
「えー?何も行き先ここだけじゃないもん、逆にここはついでだよ?キミ達が着いてくるのはここ、動物園まで。動物園以降はお開きなのでふたりきりのデートとなってます!邪魔したら課題を山盛りにするから覚悟しなよ?」
「ウス…」
『(虎杖、突然の樺地化してる……)』
簡単に言ってしまえば大きな動物園で従業員も多く、その従業員達の鬱憤が溜まっている職場のようで。
ブラック企業…ただそれだけならまだしも、多くの客も集まる環境という事もあって大きな娯楽施設は定期的に祓わないといけないらしい。
他の呪術師が来るはずだったのを悟が譲り受けたと言うけれど…。そんなテーマパークの定期的な呪術師の仕事を特級が受けるはずがないのは明らか。腕を組み寄りかかる悟をじとーっと覗き込んだ。
『……まさかとは思うけれど。脅したりしてないよね?』
「まっさかー!ちょっとしかしてないよ!」
『しとるんかい』
というわけで、と許可証を渡され帳の降りた空間へとぞろぞろと私達は動物園の裏側へと入って行くことになった。
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簡潔に言ってしまえばロッカールームにて呪霊が出ました。そして悟が行きなと言った、虎杖と釘崎が祓ってくれましたとさ…。本当についでって感じだった。たったの十数秒…特級呪術師が引き受けるものじゃない。
そしてもし私と悟だけで来てたとしても、恐らくは私でも体術程度で倒せたかもしれないレベル。それでも非術者には出来ないからというちょっとだけ危険視される案件だったのだと終わってから思う。
裏側から動物園の表側に出た所、賑やかな入園者達の居る木の塀の近くに私達4人は悟を待つ。許可証を従業員に返却するためにひとりで入っちゃったからだ。